【第6話】『DIVE、なりたかった私』
善子 「って、わぁぁぁぁ!? もうこんな時間、配信の準備しなきゃ!」
優木せつ菜と名乗る女性を家に招き入れ、シャワーを浴びせたり着替えを用意したりしていた善子は、日課である配信の時間が迫っていることに気づいていなかった。
せつ菜 「配信?」
善子 「私、毎日ぎしk……生配信をしてるのよ」
せつ菜 「そうなんですか。私に手伝えることはありますか!?」
善子 「て、手伝い?」
せつ菜 「はい! 助けていただいたお礼をさせてください」
善子 「そうねぇ……じゃあ、私の眷属役をやってくれないかしら」
善子 「って、わぁぁぁぁ!? もうこんな時間、配信の準備しなきゃ!」
優木せつ菜と名乗る女性を家に招き入れ、シャワーを浴びせたり着替えを用意したりしていた善子は、日課である配信の時間が迫っていることに気づいていなかった。
せつ菜 「配信?」
善子 「私、毎日ぎしk……生配信をしてるのよ」
せつ菜 「そうなんですか。私に手伝えることはありますか!?」
善子 「て、手伝い?」
せつ菜 「はい! 助けていただいたお礼をさせてください」
善子 「そうねぇ……じゃあ、私の眷属役をやってくれないかしら」
194: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:20:46.08 ID:F+U1m/vI
せつ菜 「眷属、ですか。具体的にどのようなことをすれば?」
善子 「時間が無いから説明は省くわ! ノリで合わせて!」
せつ菜 「えぇっ!? そ、そんな……」
慌てるせつ菜をよそに、善子は配信開始のボタンを押す。
善子 「感じます……精霊結界の崩壊が、この世の理を乱していくのを……」
せつ菜 「へ? えっと……?」
善子 「そして此度、我が下に新たな眷属を召喚した。その名も……!」
善子がせつ菜に目線を送る。
せつ菜 「あ、えっと……初めまして! 優木せつ菜です!」
善子 「時間が無いから説明は省くわ! ノリで合わせて!」
せつ菜 「えぇっ!? そ、そんな……」
慌てるせつ菜をよそに、善子は配信開始のボタンを押す。
善子 「感じます……精霊結界の崩壊が、この世の理を乱していくのを……」
せつ菜 「へ? えっと……?」
善子 「そして此度、我が下に新たな眷属を召喚した。その名も……!」
善子がせつ菜に目線を送る。
せつ菜 「あ、えっと……初めまして! 優木せつ菜です!」
195: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:21:52.85 ID:F+U1m/vI
善子 「ちょ、ちょっと! 本名はマズイわよ……!」
せつ菜 「それなら大丈夫です。せつ菜は芸名みたいなものですから」
善子 「え、そうなの? って、そうじゃなくてもっと眷属っぽい……」
その瞬間、ブツンッとなきゃの電源が落ちる音が聞こえた。善子が慌てて振り返ると、どうやらPCの電源が落ちたようだった。電源を入れ直そうとするが、謎のエラーが出て立ち上がらない。
善子 「ちょ、なんなのよ突然! こんなこと一度もなかったのに!」
善子が必死に直し方を調べながら復旧にあたるが、一時間ほど経っても、直る様子はなかった。
せつ菜 「……ごめんなさい。多分、私のせいです」
せつ菜 「それなら大丈夫です。せつ菜は芸名みたいなものですから」
善子 「え、そうなの? って、そうじゃなくてもっと眷属っぽい……」
その瞬間、ブツンッとなきゃの電源が落ちる音が聞こえた。善子が慌てて振り返ると、どうやらPCの電源が落ちたようだった。電源を入れ直そうとするが、謎のエラーが出て立ち上がらない。
善子 「ちょ、なんなのよ突然! こんなこと一度もなかったのに!」
善子が必死に直し方を調べながら復旧にあたるが、一時間ほど経っても、直る様子はなかった。
せつ菜 「……ごめんなさい。多分、私のせいです」
196: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:22:41.41 ID:F+U1m/vI
善子 「どうしてよ? あなたパソコンに指一本触れていないじゃない」
せつ菜 「私、本当に不運ですから……」
善子がきょとんとしていると、インターフォンが鳴った。玄関扉を開けると、見慣れた顔が三人分、なだれ込んできた。
千歌、曜、梨子の三人だった。
善子 「ちょ、なんなのよ突然!?」
千歌 「せつ菜ちゃん! まだいる!?」
善子 「せつ菜? あぁ、それなら……」
せつ菜 「わ、私がなにか……?」
せつ菜 「私、本当に不運ですから……」
善子がきょとんとしていると、インターフォンが鳴った。玄関扉を開けると、見慣れた顔が三人分、なだれ込んできた。
千歌、曜、梨子の三人だった。
善子 「ちょ、なんなのよ突然!?」
千歌 「せつ菜ちゃん! まだいる!?」
善子 「せつ菜? あぁ、それなら……」
せつ菜 「わ、私がなにか……?」
197: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:23:50.68 ID:F+U1m/vI
せつ菜がひょっこり顔を出すと、千歌の瞳がキラキラと輝く。
千歌 「わぁぁぁぁ!!! せつ菜ちゃん、本物だ! これはもうキセキだよー!!」
善子 「なによ、千歌この人のこと知ってるの?」
梨子 「何言ってるのよっちゃん!? あのせつ菜さんだよ!?」
曜 「麻雀やってるのにせつ菜ちゃんを知らないって……善子ちゃんらしいといえばらしいけど」
せつ菜はただ、三人の勢いに圧倒されていた。
千歌 「私は高海千歌! 浦の星女学院で、麻雀部の部長をやってます!」
千歌に続いて、曜と梨子が自己紹介をする。善子も含め、全員が麻雀部の部員だった。
千歌 「わぁぁぁぁ!!! せつ菜ちゃん、本物だ! これはもうキセキだよー!!」
善子 「なによ、千歌この人のこと知ってるの?」
梨子 「何言ってるのよっちゃん!? あのせつ菜さんだよ!?」
曜 「麻雀やってるのにせつ菜ちゃんを知らないって……善子ちゃんらしいといえばらしいけど」
せつ菜はただ、三人の勢いに圧倒されていた。
千歌 「私は高海千歌! 浦の星女学院で、麻雀部の部長をやってます!」
千歌に続いて、曜と梨子が自己紹介をする。善子も含め、全員が麻雀部の部員だった。
198: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:26:09.08 ID:F+U1m/vI
曜 「善子ちゃんの配信を見てたら、せつ菜ちゃんが映ってて、慌てて飛んできたんだ」
千歌 「私たち、せつ菜ちゃんの大会の配信を見て、麻雀を始めたんです!」
せつ菜 「…っ」
せつ菜の脳裏をよぎったのは、侑の言葉。
侑 『はじめまして! あのっ、私せつ菜ちゃんの対局を見て大ファンになって、それで麻雀を始めて!!』
せつ菜 「…………ありがとう、ございます」
千歌が盛り上がっている最中、善子はせつ菜の動画をスマホで検索して見ていた。せつ菜を見る目が、一瞬にして尊敬の眼差しに変わる。
千歌 「私たち、せつ菜ちゃんの大会の配信を見て、麻雀を始めたんです!」
せつ菜 「…っ」
せつ菜の脳裏をよぎったのは、侑の言葉。
侑 『はじめまして! あのっ、私せつ菜ちゃんの対局を見て大ファンになって、それで麻雀を始めて!!』
せつ菜 「…………ありがとう、ございます」
千歌が盛り上がっている最中、善子はせつ菜の動画をスマホで検索して見ていた。せつ菜を見る目が、一瞬にして尊敬の眼差しに変わる。
199: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:28:00.77 ID:F+U1m/vI
千歌 「あの、もしよかったら対局しませんか?」
せつ菜 「……ごめんなさい。きっと、みなさんが期待しているような麻雀は打てませんから」
曜 「もしかして炎、あれ以来……」
せつ菜 「…はい。知ってたんですね」
善子 「えっ、何かあったの?」
せつ菜 「あの大会の日。私の炎は尽きたんです。もう二度と、あのように熱い麻雀は打てません」
せつ菜 「……それでも、私と打ちたいですか?」
千歌 「え? うん、もちろん」
せつ菜 「へ?」
千歌は「当たり前じゃん」と言いたげな目で、首を傾げた。予想外の返答に、思わず変な声が出るせつ菜。
せつ菜 「……ごめんなさい。きっと、みなさんが期待しているような麻雀は打てませんから」
曜 「もしかして炎、あれ以来……」
せつ菜 「…はい。知ってたんですね」
善子 「えっ、何かあったの?」
せつ菜 「あの大会の日。私の炎は尽きたんです。もう二度と、あのように熱い麻雀は打てません」
せつ菜 「……それでも、私と打ちたいですか?」
千歌 「え? うん、もちろん」
せつ菜 「へ?」
千歌は「当たり前じゃん」と言いたげな目で、首を傾げた。予想外の返答に、思わず変な声が出るせつ菜。
200: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:29:32.54 ID:F+U1m/vI
せつ菜 「ど、どうしてですか? さっきも言いましたが、私はもう炎が…」
千歌 「そんなの関係ないよ。私たちはあなたと打ってみたい。それだけだよ」
せつ菜 「……っ」
千歌 「ほら、行こいこ!!」
せつ菜 「えぇっ!? ちょっと、行くってどこへ!?」
千歌 「部室!! 雀卓そこにしかないから!!」
せつ菜 「へぇっ!? ま、待ってください~!!」
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千歌 「そんなの関係ないよ。私たちはあなたと打ってみたい。それだけだよ」
せつ菜 「……っ」
千歌 「ほら、行こいこ!!」
せつ菜 「えぇっ!? ちょっと、行くってどこへ!?」
千歌 「部室!! 雀卓そこにしかないから!!」
せつ菜 「へぇっ!? ま、待ってください~!!」
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201: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:30:56.46 ID:F+U1m/vI
~部室~
善子 「……はぁ、やっぱり私の負けね」
曜 「四人でじゃんけんして一発負けって、ある意味才能だよね善子ちゃん」
善子 「う、うっさい!」
梨子 「そんなに怒らないでよっちゃん。この半荘が終わったら代わってあげるから」
じゃんけんの結果、せつ菜と打つのは千歌、曜、梨子の三人に決まった。
《対局開始》
東家:せつ菜 南家:曜 西家:千歌 北家:梨子
東一局、せつ菜の親。ドラは五
善子 「……はぁ、やっぱり私の負けね」
曜 「四人でじゃんけんして一発負けって、ある意味才能だよね善子ちゃん」
善子 「う、うっさい!」
梨子 「そんなに怒らないでよっちゃん。この半荘が終わったら代わってあげるから」
じゃんけんの結果、せつ菜と打つのは千歌、曜、梨子の三人に決まった。
《対局開始》
東家:せつ菜 南家:曜 西家:千歌 北家:梨子
東一局、せつ菜の親。ドラは五
202: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:33:04.42 ID:F+U1m/vI
1巡目──。
善子(な、何よこれ……)
せつ菜の配牌を後ろで見ていた善子は、血の気が引くのを感じた。
せつ菜 配牌
二三四五六23678❷❸❹ ツモ:五
せつ菜 「……リーチ」 打:六
千歌 「お、親のダブリー!?」
善子(何が『炎は尽きた』よ。配牌で高目三色のテンパイ。しかもドラドラ……)
曜(これがあの…“優木せつ菜”の麻雀っ!)
善子(な、何よこれ……)
せつ菜の配牌を後ろで見ていた善子は、血の気が引くのを感じた。
せつ菜 配牌
二三四五六23678❷❸❹ ツモ:五
せつ菜 「……リーチ」 打:六
千歌 「お、親のダブリー!?」
善子(何が『炎は尽きた』よ。配牌で高目三色のテンパイ。しかもドラドラ……)
曜(これがあの…“優木せつ菜”の麻雀っ!)
203: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:35:09.93 ID:F+U1m/vI
……しかし、違和感は徐々に他の三人も感じることとなる。
16巡目──。
せつ菜 「……。」 打:7
善子(うぅ、もう! いつになったらツモれるのよ! ていうか、2-5くらいなら他家から出てもおかしくないでしょう!?)
千歌 「…あっ、ツモ!」
千歌 ツモ
八八八789❶❷❸❻❼❾❾ ツモ:❽
ツモのみ / 300-500
善子 「あっちゃー、せっかくの倍満まで届くダブリーだったのに」
せつ菜 「…これも、麻雀のイタズラですね」
曜 「え?」
16巡目──。
せつ菜 「……。」 打:7
善子(うぅ、もう! いつになったらツモれるのよ! ていうか、2-5くらいなら他家から出てもおかしくないでしょう!?)
千歌 「…あっ、ツモ!」
千歌 ツモ
八八八789❶❷❸❻❼❾❾ ツモ:❽
ツモのみ / 300-500
善子 「あっちゃー、せっかくの倍満まで届くダブリーだったのに」
せつ菜 「…これも、麻雀のイタズラですね」
曜 「え?」
204: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:37:14.10 ID:F+U1m/vI
せつ菜 「こんな手が入ったのも、麻雀のちょっとしたからかいなのかも知れません。善子さん、王牌を捲ってみてください」
善子 「王牌を?」
善子は残った卓上に残された王牌を捲る。
善子 「えぇっ!?」
王牌
25四5❽西南2
52四❶5東發2
せつ菜 「…やっぱり」
善子 「そんな…待ちの2-5が、全部埋まってる…」
──せつ菜の麻雀は、見るに堪えないほど、酷い有様だった。
後ろで観戦していた善子の顔が、局が進む事に引きつっていく。
善子 「王牌を?」
善子は残った卓上に残された王牌を捲る。
善子 「えぇっ!?」
王牌
25四5❽西南2
52四❶5東發2
せつ菜 「…やっぱり」
善子 「そんな…待ちの2-5が、全部埋まってる…」
──せつ菜の麻雀は、見るに堪えないほど、酷い有様だった。
後ろで観戦していた善子の顔が、局が進む事に引きつっていく。
205: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:39:56.18 ID:F+U1m/vI
東三局、千歌の親。ドラは❷
9巡目──。
せつ菜 手牌
一三五六七13❸❹❺❻❼ ツモ:❼
善子(一三と13のカンチャン選択ね。どっちを落とすか……)
せつ菜 打:三
善子(一三を落としにいったわね。でもこの流れだと、多分……)
次巡──。
せつ菜 手牌
一五六七13❸❹❺❻❼❼ ツモ:二
せつ菜 「…っ! くっ……!」 打:二
9巡目──。
せつ菜 手牌
一三五六七13❸❹❺❻❼ ツモ:❼
善子(一三と13のカンチャン選択ね。どっちを落とすか……)
せつ菜 打:三
善子(一三を落としにいったわね。でもこの流れだと、多分……)
次巡──。
せつ菜 手牌
一五六七13❸❹❺❻❼❼ ツモ:二
せつ菜 「…っ! くっ……!」 打:二
206: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:42:37.55 ID:F+U1m/vI
善子(やっぱり裏目。東一局からずっとこう。結果論と言えばそうだけど……)
次巡──。
せつ菜 手牌
一五六七13❸❹❺❻❼❼ ツモ:四
善子(…っ! また裏目。こうも続くとさすがに…)
せつ菜 打:四
千歌 「……ロン」
善子(あぁっ…親への放銃。よりによって……)
せつ菜 「……幻滅したでしょう?」
善子 「え……?」
次巡──。
せつ菜 手牌
一五六七13❸❹❺❻❼❼ ツモ:四
善子(…っ! また裏目。こうも続くとさすがに…)
せつ菜 打:四
千歌 「……ロン」
善子(あぁっ…親への放銃。よりによって……)
せつ菜 「……幻滅したでしょう?」
善子 「え……?」
207: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:45:21.13 ID:F+U1m/vI
せつ菜 「炎を失った今、私は力も運も、全部無くしてしまったんです」
善子 「…自分のことを不運だって言ってたのは、そういうことだったのね」
せつ菜 「もうあの頃のように、強くて熱い麻雀は打てません」
せつ菜 「──優木せつ菜は、もういないんです」
千歌 「せつ菜ちゃん…」
せつ菜 「だから同好会を離れて、ここまで旅に出たんです」
曜 「どうして沼津だったの?」
せつ菜 「私の象徴は“炎”でした。だからその正反対である“海”の近くでなら、新しい私が見つかると思ったんです」
善子 「…自分のことを不運だって言ってたのは、そういうことだったのね」
せつ菜 「もうあの頃のように、強くて熱い麻雀は打てません」
せつ菜 「──優木せつ菜は、もういないんです」
千歌 「せつ菜ちゃん…」
せつ菜 「だから同好会を離れて、ここまで旅に出たんです」
曜 「どうして沼津だったの?」
せつ菜 「私の象徴は“炎”でした。だからその正反対である“海”の近くでなら、新しい私が見つかると思ったんです」
208: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:48:35.72 ID:F+U1m/vI
千歌 「新しいせつ菜ちゃん……」
せつ菜 「みんなが期待している“優木せつ菜”の麻雀が打てなくても、新しい自分のスタイルが見せられればと」
せつ菜 「でも結局、“優木せつ菜”に一番固執していたのは、私自身だったんです」
善子 「せつ菜……」
せつ菜 「あの頃のような麻雀が打ちたい……。でももうそれは…っ……二度と叶わないっ!!」
せつ菜 「もう強くもなんともない…っ!! 魅せる麻雀も打てない…っ!!」
せつ菜 「だんだん、自分がどうしたいのか分からなくなってきたんです。…それにもう、私は麻雀に向いてないんじゃないかって…………」
せつ菜 「みんなが期待している“優木せつ菜”の麻雀が打てなくても、新しい自分のスタイルが見せられればと」
せつ菜 「でも結局、“優木せつ菜”に一番固執していたのは、私自身だったんです」
善子 「せつ菜……」
せつ菜 「あの頃のような麻雀が打ちたい……。でももうそれは…っ……二度と叶わないっ!!」
せつ菜 「もう強くもなんともない…っ!! 魅せる麻雀も打てない…っ!!」
せつ菜 「だんだん、自分がどうしたいのか分からなくなってきたんです。…それにもう、私は麻雀に向いてないんじゃないかって…………」
209: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:50:52.88 ID:F+U1m/vI
千歌 「…………私ね」
せつ菜 「…?」
千歌 「私、せつ菜ちゃんの対局を見て、麻雀を始めたって言ったよね」
せつ菜 「…はい。ですが、もうあの炎は」
千歌 「炎に魅せられた訳じゃない。あぁいや、もちろんそれも凄かったけど…」
千歌 「せつ菜ちゃんの姿を見て、“楽しそうだなぁ”とか、“やってみたいなぁ”って。素直にそう思ったんだ」
せつ菜 「楽しそう…?」
千歌 「自分に向いてるか、とか。どうでもよかった。ただただ、麻雀を打ってみたくなった」
曜 「何かにハマると千歌ちゃん、誰も抑えられなくなるから」
せつ菜 「…?」
千歌 「私、せつ菜ちゃんの対局を見て、麻雀を始めたって言ったよね」
せつ菜 「…はい。ですが、もうあの炎は」
千歌 「炎に魅せられた訳じゃない。あぁいや、もちろんそれも凄かったけど…」
千歌 「せつ菜ちゃんの姿を見て、“楽しそうだなぁ”とか、“やってみたいなぁ”って。素直にそう思ったんだ」
せつ菜 「楽しそう…?」
千歌 「自分に向いてるか、とか。どうでもよかった。ただただ、麻雀を打ってみたくなった」
曜 「何かにハマると千歌ちゃん、誰も抑えられなくなるから」
210: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:53:56.42 ID:F+U1m/vI
梨子 「本当。いつも振り回されっぱなしなんだから」
千歌 「…私ね、ずっと麻雀を打っても、せつ菜ちゃんみたいに炎が出たり、彼方ちゃんみたいに夢を見せたり、そういう特別なことは何も出来なかった」
せつ菜 「そうでしたか……」
千歌 「でもね、麻雀を始めたこと、後悔なんてしたこと一度もない」
せつ菜 「え…?」
千歌 「麻雀を始めたからこそ、今こうやってみんなに出会えてる。こんなに素敵な時間を過ごせてる」
千歌 「私今……最っ高に楽しいんだ!!」
せつ菜 「っ…!」
千歌 「…私ね、ずっと麻雀を打っても、せつ菜ちゃんみたいに炎が出たり、彼方ちゃんみたいに夢を見せたり、そういう特別なことは何も出来なかった」
せつ菜 「そうでしたか……」
千歌 「でもね、麻雀を始めたこと、後悔なんてしたこと一度もない」
せつ菜 「え…?」
千歌 「麻雀を始めたからこそ、今こうやってみんなに出会えてる。こんなに素敵な時間を過ごせてる」
千歌 「私今……最っ高に楽しいんだ!!」
せつ菜 「っ…!」
211: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 18:59:08.49 ID:F+U1m/vI
『私の夢は、麻雀の楽しさを多くの人に知ってもらうことです』
せつ菜(……そうだ。私も最初はそれで十分だった。なのに、どうして)
曜 「ねぇせつ菜ちゃん、知ってる? 最近虹ヶ咲学園の同好会が、新しい試みを始めてること」
せつ菜 「いえ…距離をとるようにしてましたから」
曜 「ほら見て。動画投稿サイトに、毎日アップされてるんだよ、対局動画」
せつ菜 「対局動画……ですか」
曜のスマホに映し出されたのは、懐かしい面々。
それに、新たな仲間たち。
せつ菜(……そうだ。私も最初はそれで十分だった。なのに、どうして)
曜 「ねぇせつ菜ちゃん、知ってる? 最近虹ヶ咲学園の同好会が、新しい試みを始めてること」
せつ菜 「いえ…距離をとるようにしてましたから」
曜 「ほら見て。動画投稿サイトに、毎日アップされてるんだよ、対局動画」
せつ菜 「対局動画……ですか」
曜のスマホに映し出されたのは、懐かしい面々。
それに、新たな仲間たち。
212: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 19:05:15.43 ID:F+U1m/vI
かすみ『やっほ~! みんなのプリンセス、中須かすみで~す!!』
愛『今日はアタシとりなりー、歩夢とかすかすで対局していくよー!』
かすみ『ちょっと! かすかすって呼ばないでくださいって何度言えば…!!』
せつ菜 「みなさん…」
梨子 「すごく楽しそうね、この子たち」
曜 「大人気なんだよ。今ではファンクラブなんかもあるみたいで…」
かすみ『今日もみなさんに、楽しい麻雀をお届けしますよ~!!』
せつ菜 「…っ! かすみさん……」
愛『今日はアタシとりなりー、歩夢とかすかすで対局していくよー!』
かすみ『ちょっと! かすかすって呼ばないでくださいって何度言えば…!!』
せつ菜 「みなさん…」
梨子 「すごく楽しそうね、この子たち」
曜 「大人気なんだよ。今ではファンクラブなんかもあるみたいで…」
かすみ『今日もみなさんに、楽しい麻雀をお届けしますよ~!!』
せつ菜 「…っ! かすみさん……」
213: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 19:09:17.11 ID:F+U1m/vI
かすみの言葉で、せつ菜はハッとする。
せつ菜(…そうでした。私はかすみさんに。想いを受け継いで欲しいと言っておきながら)
せつ菜(…私自身が、その事を忘れていました)
──期待されることは、嬉しかった。
だけどいつの間にか、それが全てになっていた。
自分が大好きだった麻雀を楽しむことが、二の次になっていた。
せつ菜 「……もう“優木せつ菜”に、こだわらなくていいんですね」
せつ菜 「私は、私が楽しくなれる麻雀を打ちます。そしてこの“大好きの気持ち”がいつか、みんなに届くように」
せつ菜(…そうでした。私はかすみさんに。想いを受け継いで欲しいと言っておきながら)
せつ菜(…私自身が、その事を忘れていました)
──期待されることは、嬉しかった。
だけどいつの間にか、それが全てになっていた。
自分が大好きだった麻雀を楽しむことが、二の次になっていた。
せつ菜 「……もう“優木せつ菜”に、こだわらなくていいんですね」
せつ菜 「私は、私が楽しくなれる麻雀を打ちます。そしてこの“大好きの気持ち”がいつか、みんなに届くように」
214: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 19:12:25.37 ID:F+U1m/vI
せつ菜 「そんな麻雀が打てる私に、生まれ変わるんです!!」
千歌 「せつ菜ちゃん…」
せつ菜 「ありがとうございます…みなさん。おかげで気付くことが出来ました。なりたかった私に」
曜 「違うよ。気がつけたのは、せつ菜ちゃんの熱い想いがあったからこそだよ」
せつ菜 「曜さん…」
千歌 「…ねぇ、海に潜ってみない?」
せつ菜 「えっ、海…ですか?」
千歌 「うん。新しい自分を見つけるには、うってつけの場所だと思う。今まで見たことのない景色を、見せてあげるよ」
ーーーーーー
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千歌 「せつ菜ちゃん…」
せつ菜 「ありがとうございます…みなさん。おかげで気付くことが出来ました。なりたかった私に」
曜 「違うよ。気がつけたのは、せつ菜ちゃんの熱い想いがあったからこそだよ」
せつ菜 「曜さん…」
千歌 「…ねぇ、海に潜ってみない?」
せつ菜 「えっ、海…ですか?」
千歌 「うん。新しい自分を見つけるには、うってつけの場所だと思う。今まで見たことのない景色を、見せてあげるよ」
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215: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 19:16:02.19 ID:F+U1m/vI
せつ菜 「うわぁっ……!! なんですかこれ…!」
曜 「綺麗でしょ? 沼津に来たんなら、海には入らないと」
始めて潜った海。そこはまさに新世界だった。
せつ菜(…感じる。全身で波の動き、勢いを)
せつ菜(これが…潜るという感覚。やっぱり、ここに来て正解でした)
せつ菜(ここでなら、新しい私がきっと…!)
水面に顔を出した五人は、自然と笑いあっていた。
梨子 「…ねぇ、せつ菜ちゃん。海から出たら、もう帰っちゃうの? 虹ヶ咲に」
せつ菜 「いえ、もう少しここに残ろうと思います。ここで新しい私を…なりたかった私を探したいんです」
千歌 「…そっか」
曜 「綺麗でしょ? 沼津に来たんなら、海には入らないと」
始めて潜った海。そこはまさに新世界だった。
せつ菜(…感じる。全身で波の動き、勢いを)
せつ菜(これが…潜るという感覚。やっぱり、ここに来て正解でした)
せつ菜(ここでなら、新しい私がきっと…!)
水面に顔を出した五人は、自然と笑いあっていた。
梨子 「…ねぇ、せつ菜ちゃん。海から出たら、もう帰っちゃうの? 虹ヶ咲に」
せつ菜 「いえ、もう少しここに残ろうと思います。ここで新しい私を…なりたかった私を探したいんです」
千歌 「…そっか」
216: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 19:20:29.92 ID:F+U1m/vI
せつ菜 「それにもう、私は“優木せつ菜”ではありませんよ」
善子 「どういうこと?」
せつ菜は大きく息を吸って、空へと向かって吠える。
「私は──中川菜々ですっ!!!」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
つづく
善子 「どういうこと?」
せつ菜は大きく息を吸って、空へと向かって吠える。
「私は──中川菜々ですっ!!!」
ーーーーーー
ーーーー
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つづく
217: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 19:24:46.97 ID:F+U1m/vI
【キャラクター紹介.6】
優木せつ菜
『自身に与えられる幸運を、前借りする』能力。
道で100円玉を拾う、駅に着いた瞬間電車が来る。そういった、将来自分に訪れる小さな幸運を、今自分が打っている麻雀に使うことが出来る能力。
能力名だけ聞くと麻雀以外にも使えそうだが、対局中以外に行使できないようになっている。
前借りなので、もちろん使った分だけ将来自分に訪れる幸運は少なくなる。前話、散々な目にあっていたのもこの為である。
能力を行使すると、自身の運が炎として具現化し、手役の高さに応じて炎の勢いも変わる。
尚、使った運は『優木せつ菜として生きた場合』の運であるため、中川菜々として生きることを選んだ後、運は人並みに戻っている。
優木せつ菜
『自身に与えられる幸運を、前借りする』能力。
道で100円玉を拾う、駅に着いた瞬間電車が来る。そういった、将来自分に訪れる小さな幸運を、今自分が打っている麻雀に使うことが出来る能力。
能力名だけ聞くと麻雀以外にも使えそうだが、対局中以外に行使できないようになっている。
前借りなので、もちろん使った分だけ将来自分に訪れる幸運は少なくなる。前話、散々な目にあっていたのもこの為である。
能力を行使すると、自身の運が炎として具現化し、手役の高さに応じて炎の勢いも変わる。
尚、使った運は『優木せつ菜として生きた場合』の運であるため、中川菜々として生きることを選んだ後、運は人並みに戻っている。
218: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/11(木) 19:29:03.05 ID:F+U1m/vI
次回 第7話『能力、それは適性か』
219: 名無しで叶える物語(たこやき) 2021/02/11(木) 19:52:54.02 ID:S4uR+T7j
千歌ちゃん達も出てた。千歌ちゃん達はとくに能力とかなくて普通なのか
221: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2021/02/11(木) 21:26:43.72 ID:qpj7QxYZ
Aqoursも登場して熱い展開だあ
菜々は別の能力っぽいのか
菜々は別の能力っぽいのか
引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1612522095/
第7話へ続く

がんばれー!
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