【第7話】『能力、それは適性か』
~夜 エマの部屋~
エマ 「それでね、毎日麻雀の対局配信をすることにしたんだ。一ヶ月続けたら、どんどん視聴者さんが増えてきたんだよ」
果林 「そう、良かったわね」
エマ 「麻雀のイメージを変えて、楽しさを広める。それが同好会の新しい目標なんだ」
果林 「…楽しさ、ね」
果林 「麻雀を心から楽しめるのは、勝てる人だけよ」
エマ 「えっ…?」
~夜 エマの部屋~
エマ 「それでね、毎日麻雀の対局配信をすることにしたんだ。一ヶ月続けたら、どんどん視聴者さんが増えてきたんだよ」
果林 「そう、良かったわね」
エマ 「麻雀のイメージを変えて、楽しさを広める。それが同好会の新しい目標なんだ」
果林 「…楽しさ、ね」
果林 「麻雀を心から楽しめるのは、勝てる人だけよ」
エマ 「えっ…?」
224: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:06:52.16 ID:zIfTu9pN
果林 「同好会の子たちは、確かにみんな強いわ。それは配信を見てればわかる」
エマ 「うん。みんな毎日勉強してるから」
果林 「勉強…ね。あの子たちの強さは、生まれ持ったもののように見えるけど?」
エマ 「そんなことないよ。かすみちゃんだって、最初は全然勝てなかったけど…」
果林 「そういうことじゃないの。視聴者の人がそう感じるってことよ」
エマ 「視聴者の人が?」
果林 「あの圧倒的な強さを見て、果たしてどれだけの人が『私もやってみたい』と思うかしら?」
エマ 「うん。みんな毎日勉強してるから」
果林 「勉強…ね。あの子たちの強さは、生まれ持ったもののように見えるけど?」
エマ 「そんなことないよ。かすみちゃんだって、最初は全然勝てなかったけど…」
果林 「そういうことじゃないの。視聴者の人がそう感じるってことよ」
エマ 「視聴者の人が?」
果林 「あの圧倒的な強さを見て、果たしてどれだけの人が『私もやってみたい』と思うかしら?」
225: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:08:07.27 ID:zIfTu9pN
果林 「“私みたいに”弱い人はね、あなた達みたいに麻雀を楽しめないのよ」
エマ 「そんなこと……ない」
果林 「いつか分かるわ。弱い人の気持ちに、少しは寄り添ってみなさい?」
エマ 「…果林ちゃん、同好会に入ってみない?」
果林 「遠慮しておくわ」
エマ 「果林ちゃん……」
果林 「麻雀に嫌われている私が入ったら、みんなに迷惑でしょう?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
エマ 「そんなこと……ない」
果林 「いつか分かるわ。弱い人の気持ちに、少しは寄り添ってみなさい?」
エマ 「…果林ちゃん、同好会に入ってみない?」
果林 「遠慮しておくわ」
エマ 「果林ちゃん……」
果林 「麻雀に嫌われている私が入ったら、みんなに迷惑でしょう?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
226: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:09:08.84 ID:zIfTu9pN
かすみ 「あ…………あぁ………」
愛 「ぶちょー、どうしたの? 扉の前でそんなに項垂れて」
璃奈 「早く入ろう。麻雀、打ちたい」
かすみ 「愛先輩、りな子……見て……」
愛 「見るって何を……」
璃奈 「あれっ? 麻雀同好会のプレートが、無くなってる」
愛 「本当だ!? まさか盗まれた…?」
愛 「ぶちょー、どうしたの? 扉の前でそんなに項垂れて」
璃奈 「早く入ろう。麻雀、打ちたい」
かすみ 「愛先輩、りな子……見て……」
愛 「見るって何を……」
璃奈 「あれっ? 麻雀同好会のプレートが、無くなってる」
愛 「本当だ!? まさか盗まれた…?」
227: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:09:53.53 ID:zIfTu9pN
璃奈 「あ、扉に紙も貼ってある。えっと……」
璃奈 「はいぶ、つーちしょ」
愛 「ハイブツーチショ?」
「「廃部通知書ーーーっ!!!?!?」」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
璃奈 「はいぶ、つーちしょ」
愛 「ハイブツーチショ?」
「「廃部通知書ーーーっ!!!?!?」」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
228: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:11:01.20 ID:zIfTu9pN
~生徒会室~
栞子 「…なんですか。勢揃いで」
かすみ 「なんですかはこっちのセリフです!! なんですかこの通知書!!」
栞子 「見ての通りですが」
侑 「どうしてですか? 賭け麻雀は辞めさせましたよ? そしたら廃部は撤回するって……」
栞子 「そうですね。確かに賭け麻雀は無くなったと、報告を受けました」
しずく 「ならどうして…!?」
栞子 「あなた方の“自作自演”である可能性が捨てきれないからです」
侑 「自作自演……?」
栞子 「…なんですか。勢揃いで」
かすみ 「なんですかはこっちのセリフです!! なんですかこの通知書!!」
栞子 「見ての通りですが」
侑 「どうしてですか? 賭け麻雀は辞めさせましたよ? そしたら廃部は撤回するって……」
栞子 「そうですね。確かに賭け麻雀は無くなったと、報告を受けました」
しずく 「ならどうして…!?」
栞子 「あなた方の“自作自演”である可能性が捨てきれないからです」
侑 「自作自演……?」
229: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:11:54.32 ID:zIfTu9pN
栞子 「あなた方が賭け麻雀を行っていて、私たちに警告されたタイミングで辞めた。その可能性もあるということです」
侑 「そんな……」
栞子 「実際、私が警告をしてすぐ、賭け麻雀が無くなったと報告を受けました。あまりにも出来すぎです」
かすみ 「かすみん達が辞めさせたんです! 嘘なんかついてません!」
栞子 「ですがその可能性を否定出来ない以上、麻雀同好会を残すのは危険だと、職員会議及び生徒会で判断しました」
歩夢 「そんな……っ」
栞子 「それと、これは回収させて頂きました」
栞子が奥から取り出したのは、愛と璃奈が空き教室で使っていた雀卓と牌であった。
侑 「そんな……」
栞子 「実際、私が警告をしてすぐ、賭け麻雀が無くなったと報告を受けました。あまりにも出来すぎです」
かすみ 「かすみん達が辞めさせたんです! 嘘なんかついてません!」
栞子 「ですがその可能性を否定出来ない以上、麻雀同好会を残すのは危険だと、職員会議及び生徒会で判断しました」
歩夢 「そんな……っ」
栞子 「それと、これは回収させて頂きました」
栞子が奥から取り出したのは、愛と璃奈が空き教室で使っていた雀卓と牌であった。
230: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:13:18.04 ID:zIfTu9pN
愛 「っ…!! 返して!」
栞子 「返せ? つまりこれはあなたのということですか?」
栞子 「この雀卓は、校内で賭け麻雀が行われていた証拠として、被害者の報告を元に差し押さえたものです。これがあなたのだということは…」
栞子 「賭け麻雀をしていたのは自分だ、と認めたことになりますが?」
愛 「ぐっ……」
栞子 「校内で賭博行為など、言語道断。即刻停学か、最悪の場合退学も考えられます」
璃奈(愛さん……)
栞子 「賭け麻雀をしていた人物が名乗り出れば、同好会への疑いも晴れ、廃部も撤回となりますが」
愛 「…………私は…」
栞子 「返せ? つまりこれはあなたのということですか?」
栞子 「この雀卓は、校内で賭け麻雀が行われていた証拠として、被害者の報告を元に差し押さえたものです。これがあなたのだということは…」
栞子 「賭け麻雀をしていたのは自分だ、と認めたことになりますが?」
愛 「ぐっ……」
栞子 「校内で賭博行為など、言語道断。即刻停学か、最悪の場合退学も考えられます」
璃奈(愛さん……)
栞子 「賭け麻雀をしていた人物が名乗り出れば、同好会への疑いも晴れ、廃部も撤回となりますが」
愛 「…………私は…」
231: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:15:00.82 ID:zIfTu9pN
侑 「愛さん、ダメだよ」
愛 「えっ…」
いくら同好会のためとはいえ、愛が退学になるかもしれない判断をさせるわけにはいかない。
その意志を伝えるために、侑は愛の袖を強く掴んだ。
栞子 「…それに、あなた方は麻雀同好会に籍を入れておくには勿体ないのです」
彼方 「勿体ない?」
栞子 「愛さん、あなたの身体能力は、ほとんどの運動部が喉から手が出るほど欲しがっています」
栞子 「璃奈さんも。コンピューター研究部から何度も勧誘を受けていると聞いています」
璃奈 「…………。」
愛 「えっ…」
いくら同好会のためとはいえ、愛が退学になるかもしれない判断をさせるわけにはいかない。
その意志を伝えるために、侑は愛の袖を強く掴んだ。
栞子 「…それに、あなた方は麻雀同好会に籍を入れておくには勿体ないのです」
彼方 「勿体ない?」
栞子 「愛さん、あなたの身体能力は、ほとんどの運動部が喉から手が出るほど欲しがっています」
栞子 「璃奈さんも。コンピューター研究部から何度も勧誘を受けていると聞いています」
璃奈 「…………。」
232: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:16:36.71 ID:zIfTu9pN
栞子 「あなた方にはそれぞれの適性があります。適性が無いことを続けるより、各々に適したことに努めるべきです」
歩夢 「適性が無いこと……?」
栞子 「あなた方には、麻雀の適性がないということです」
かすみ 「適性が無い…? そんなことないです! かすみん達は麻雀が大好きで、毎日頑張って勉強もしています!」
侑 「そうだよ! それにみんなには、特別な力だって…」
栞子 「特別な力……。だからこそ、ですよ」
エマ 「だからこそ?」
栞子 「“能力”があることが、適性の無い理由なんです」
歩夢 「適性が無いこと……?」
栞子 「あなた方には、麻雀の適性がないということです」
かすみ 「適性が無い…? そんなことないです! かすみん達は麻雀が大好きで、毎日頑張って勉強もしています!」
侑 「そうだよ! それにみんなには、特別な力だって…」
栞子 「特別な力……。だからこそ、ですよ」
エマ 「だからこそ?」
栞子 「“能力”があることが、適性の無い理由なんです」
233: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:18:23.65 ID:zIfTu9pN
愛 「何言ってるの? 能力があるってことは強いってこと。強いってことは適性があるって事じゃん」
栞子 「……分かっていませんね。ならば教えて差し上げます」
栞子は、空き教室から押収した雀卓を、同好会メンバーの前に置いた。
愛 「…会長さんも打てるの?」
栞子 「えぇ。適性があるのなら、私くらいには勝てますよね?」
愛 「もちろん。それに一対三だよ? 大丈夫なの?」
栞子 「はい、十分です」
愛 「……言ってくれるじゃん」
かすみ 「うぅー…なんだかムカムカしてきました。愛先輩、かすみんも打ちます!」
彼方 「今回は彼方ちゃんにも打たせて。同好会を守るために、頑張っちゃうよ~」
栞子 「…決まりましたね。それでは始めますか」
栞子 「……分かっていませんね。ならば教えて差し上げます」
栞子は、空き教室から押収した雀卓を、同好会メンバーの前に置いた。
愛 「…会長さんも打てるの?」
栞子 「えぇ。適性があるのなら、私くらいには勝てますよね?」
愛 「もちろん。それに一対三だよ? 大丈夫なの?」
栞子 「はい、十分です」
愛 「……言ってくれるじゃん」
かすみ 「うぅー…なんだかムカムカしてきました。愛先輩、かすみんも打ちます!」
彼方 「今回は彼方ちゃんにも打たせて。同好会を守るために、頑張っちゃうよ~」
栞子 「…決まりましたね。それでは始めますか」
234: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:19:55.22 ID:zIfTu9pN
《対局開始》
東家:愛 南家:栞子 西家:かすみ 北家:彼方
東一局、愛の親。ドラは❾
愛(よしっ! カナちゃんの向かい側に会長が座った! もう貰ったも同然だね…)
彼方(じゃあ手始め国士無双の夢から……!)
栞子 「……あの、早く切っていただけませんか?」
愛 「えっ、あぁ…ごめん」 打:南
彼方(……えっ? 夢に堕ちない…?)
かすみ(まさか、本当に国士無双を狙ってる? 侑先輩の時みたいに……)
東家:愛 南家:栞子 西家:かすみ 北家:彼方
東一局、愛の親。ドラは❾
愛(よしっ! カナちゃんの向かい側に会長が座った! もう貰ったも同然だね…)
彼方(じゃあ手始め国士無双の夢から……!)
栞子 「……あの、早く切っていただけませんか?」
愛 「えっ、あぁ…ごめん」 打:南
彼方(……えっ? 夢に堕ちない…?)
かすみ(まさか、本当に国士無双を狙ってる? 侑先輩の時みたいに……)
235: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:20:59.01 ID:zIfTu9pN
彼方(まさか、ね……。でもみんな、気をつけて)
かすみ(よーし、ならかすみんの炎で一気に決めちゃいますよ!!)
かすみがツモる牌に力を込めるが、火花のひとつすら出ない。
かすみ(…ど、どうして)
愛 「……何かした? 会長さん」
栞子 「……えぇ。これは私の能力」
栞子 「『能力を消す』という能力です」
かすみ(よーし、ならかすみんの炎で一気に決めちゃいますよ!!)
かすみがツモる牌に力を込めるが、火花のひとつすら出ない。
かすみ(…ど、どうして)
愛 「……何かした? 会長さん」
栞子 「……えぇ。これは私の能力」
栞子 「『能力を消す』という能力です」
236: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:22:13.90 ID:zIfTu9pN
彼方 「そんな…」
愛 「すっごい能力じゃん。でもそれなら純粋な実力勝負。毎日打ってるアタシたちの方が上手だって!」
かすみ 「そ、そうですよ! 炎に頼らなくても、かすみんは強いんです!!」
栞子 「……だといいですね」
9巡目──。
栞子 手牌
六七七八八678❸❺❻❼❽ ツモ:❹
侑(いい手が入ってる。678の三色か…)
栞子 打:七
しずく(五-八 待ちのテンパイですね。でもリーチはせずダマですか)
愛 「すっごい能力じゃん。でもそれなら純粋な実力勝負。毎日打ってるアタシたちの方が上手だって!」
かすみ 「そ、そうですよ! 炎に頼らなくても、かすみんは強いんです!!」
栞子 「……だといいですね」
9巡目──。
栞子 手牌
六七七八八678❸❺❻❼❽ ツモ:❹
侑(いい手が入ってる。678の三色か…)
栞子 打:七
しずく(五-八 待ちのテンパイですね。でもリーチはせずダマですか)
238: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:23:42.38 ID:zIfTu9pN
次巡──。
栞子 手牌
六七八八678❸❹❺❻❼❽ ツモ:❾
侑(ドラの❾引き。難しいところだけど、待ちを広く受けるなら……)
栞子 打:八
しずく(頭待ちの三面張ですね。❸-❻-❾で、❾が出れば三色のドラドラで満貫……)
次巡──。
栞子 手牌
六七八678❸❹❺❻❼❽❾ ツモ:7
侑(これはツモ切りだね)
栞子 手牌
六七八八678❸❹❺❻❼❽ ツモ:❾
侑(ドラの❾引き。難しいところだけど、待ちを広く受けるなら……)
栞子 打:八
しずく(頭待ちの三面張ですね。❸-❻-❾で、❾が出れば三色のドラドラで満貫……)
次巡──。
栞子 手牌
六七八678❸❹❺❻❼❽❾ ツモ:7
侑(これはツモ切りだね)
240: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:25:24.44 ID:zIfTu9pN
栞子 「リーチ」 打:❾
しずく(っ、ドラ切りリーチ!? ドラも三面張も捨てて、タンヤオの7単騎……どうしてそんな……)
次巡──。
栞子 「…………。」
侑(ま、まさか……)
栞子 「…ツモ。3000-6000」
栞子 ツモ
六七八6778❸❹❺❻❼❽ ツモ:7
リーチ・一発・ツモ・タンヤオ・三色同順 / 3000-6000
しずく(っ、ドラ切りリーチ!? ドラも三面張も捨てて、タンヤオの7単騎……どうしてそんな……)
次巡──。
栞子 「…………。」
侑(ま、まさか……)
栞子 「…ツモ。3000-6000」
栞子 ツモ
六七八6778❸❹❺❻❼❽ ツモ:7
リーチ・一発・ツモ・タンヤオ・三色同順 / 3000-6000
241: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:27:19.45 ID:zIfTu9pN
かすみ 「な、なんですかその待ち!? ❾を残せば三面張リーチだったじゃないですか!」
愛 「まさかとは思うけど……積み込み?」
栞子 「そんなイカサマ有り得ませんよ。ただ、あなた方三人の手牌を考えれば、7が一番ツモれると判断したまでです」
彼方 「彼方ちゃん達の手牌を……?」
栞子 「そうですね、まずは愛さん」
栞子 「早めに8を落として迷彩をかけにいきましたね。テンパイ直前に四を切っているので、一見五-八が怪しく見えますが、牌を切った時の勢いの強さから見て、四は最後まで残したブラフ」
愛 「な、何言って……」
栞子 「テンパイの3巡前、手出しの2。ツモった牌は2のあった場所の4つ隣に入れました。ピンズをツモったと判断するべきですが」
愛 「まさかとは思うけど……積み込み?」
栞子 「そんなイカサマ有り得ませんよ。ただ、あなた方三人の手牌を考えれば、7が一番ツモれると判断したまでです」
彼方 「彼方ちゃん達の手牌を……?」
栞子 「そうですね、まずは愛さん」
栞子 「早めに8を落として迷彩をかけにいきましたね。テンパイ直前に四を切っているので、一見五-八が怪しく見えますが、牌を切った時の勢いの強さから見て、四は最後まで残したブラフ」
愛 「な、何言って……」
栞子 「テンパイの3巡前、手出しの2。ツモった牌は2のあった場所の4つ隣に入れました。ピンズをツモったと判断するべきですが」
242: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:29:11.04 ID:zIfTu9pN
栞子 「あなたは4巡目に❺を切っています。ピンズは早々に伸びないと踏んでいます。つまりあのときのツモは5が濃厚。2を切ってを5入れたということは」
栞子 「345の三色、もしくは345の一盃口でしょうか」
愛 「うっ……」
栞子 「つまり早めの四切りや、あなたの性格を踏まえて考えると、待ちはピンズの端か……いやそれよりも、四のスジが濃厚でしょう」
愛 最終手牌
一三四五334455東東東
栞子 「逆にかすみさん。あなたは捨牌が素直すぎます。見え見えの混一色手。問題は待ちだけですが、手出し位置でそれも明白。❸-❻待ち」
かすみ 最終手牌
❶❷❸❹❺❾❾❾南南西西西
栞子 「345の三色、もしくは345の一盃口でしょうか」
愛 「うっ……」
栞子 「つまり早めの四切りや、あなたの性格を踏まえて考えると、待ちはピンズの端か……いやそれよりも、四のスジが濃厚でしょう」
愛 最終手牌
一三四五334455東東東
栞子 「逆にかすみさん。あなたは捨牌が素直すぎます。見え見えの混一色手。問題は待ちだけですが、手出し位置でそれも明白。❸-❻待ち」
かすみ 最終手牌
❶❷❸❹❺❾❾❾南南西西西
243: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:32:06.55 ID:zIfTu9pN
栞子は、牌を透かすかのように、全員の手牌の傾向を言い当てた。
栞子 「結局、山に残っているのは❸-❻-❾よりも7。他の全員も、7をツモれば、切るか手を崩すしかありません。ならばあの局面、❾切りリーチが最善手です」
愛 「……そんな…」
彼方(ダメだ……。これ以上打たなくても、感覚で分かる)
──完敗だった。
その対局で、栞子以外の三人のうち一人として、ロンもツモも宣言させて貰えなかった。
栞子の、完全試合だった。
栞子 「結局、山に残っているのは❸-❻-❾よりも7。他の全員も、7をツモれば、切るか手を崩すしかありません。ならばあの局面、❾切りリーチが最善手です」
愛 「……そんな…」
彼方(ダメだ……。これ以上打たなくても、感覚で分かる)
──完敗だった。
その対局で、栞子以外の三人のうち一人として、ロンもツモも宣言させて貰えなかった。
栞子の、完全試合だった。
244: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:34:00.79 ID:zIfTu9pN
栞子 「……これで分かりましたか? 能力を失えば、この有様。適性がないというのはそういう事です」
栞子 「力があるが故、自然とその力に頼ってしまう。その支えがなくなった瞬間、あとは総崩れです」
歩夢 「…………それでも」
栞子 「…?」
歩夢 「それでも私たちは、麻雀が大好きなんだよ」
栞子 「……。」
歩夢 「たしかに栞子ちゃんの言う通り、私たちは力に頼ってきたかもしれない。それでも……」
歩夢 「私たちは、麻雀を続けたい…」
栞子 「力があるが故、自然とその力に頼ってしまう。その支えがなくなった瞬間、あとは総崩れです」
歩夢 「…………それでも」
栞子 「…?」
歩夢 「それでも私たちは、麻雀が大好きなんだよ」
栞子 「……。」
歩夢 「たしかに栞子ちゃんの言う通り、私たちは力に頼ってきたかもしれない。それでも……」
歩夢 「私たちは、麻雀を続けたい…」
245: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:36:13.11 ID:zIfTu9pN
栞子 「……どうして能力持ちは、みんな同じことを言うのでしょうか」
歩夢 「えっ?」
栞子 「能力は……あなたたち自身まで変えてしまう、恐ろしい力なんです…! あなた達は、今すぐ麻雀を辞めるべきです!!」
侑 「私たち自身を変える…? それ、どういう意味?」
栞子 「…知る必要はありません。もう同好会は廃部になり、あなた方が麻雀を打つことはありませんから」
愛 「…………会長さん」
栞子 「はい?」
歩夢 「えっ?」
栞子 「能力は……あなたたち自身まで変えてしまう、恐ろしい力なんです…! あなた達は、今すぐ麻雀を辞めるべきです!!」
侑 「私たち自身を変える…? それ、どういう意味?」
栞子 「…知る必要はありません。もう同好会は廃部になり、あなた方が麻雀を打つことはありませんから」
愛 「…………会長さん」
栞子 「はい?」
246: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:38:51.77 ID:zIfTu9pN
愛 「賭け麻雀の犯人が名乗り出て…認めれば、同好会の廃部は無くなるんだよね?」
侑 「…っ!?」
栞子 「…約束はできません。先生方が認めれば、その可能性があるというだけて…」
愛 「可能性があれば十分だよ」
侑 「愛ちゃん、何考えてるの!? そんなことしたら…!!」
愛 「いいんだよ、これで。元はと言えばアタシが全部悪いんだから」
歩夢 「そんな…違う! 愛ちゃんは、皆のことを想って…!」
愛 「理由がどうであれ、これが結果。……ごめんね、迷惑かけちゃって」
侑 「…っ!?」
栞子 「…約束はできません。先生方が認めれば、その可能性があるというだけて…」
愛 「可能性があれば十分だよ」
侑 「愛ちゃん、何考えてるの!? そんなことしたら…!!」
愛 「いいんだよ、これで。元はと言えばアタシが全部悪いんだから」
歩夢 「そんな…違う! 愛ちゃんは、皆のことを想って…!」
愛 「理由がどうであれ、これが結果。……ごめんね、迷惑かけちゃって」
247: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:40:34.47 ID:zIfTu9pN
栞子 「……認めるんですね?」
璃奈 「愛さん…っ、ダメ…!」
愛 「大丈夫だよりなりー。りなりーのことは誰にも言わないから」
璃奈 「違う…そうじゃない…。私は愛さんにいなくなってほしくない…!」
愛 「…ごめんね。でも、これはアタシなりの恩返しなんだ」
璃奈 「恩返し…?」
愛 「…大嫌いだった麻雀。その楽しさに気付かせてくれた、同好会のみんなへの恩返し。今アタシに出来ることは、これしかないから」
愛は、自分の袖を掴んでいた璃奈を振りほどき、栞子の前へと、大きく一歩を、踏み出した。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
つづく
璃奈 「愛さん…っ、ダメ…!」
愛 「大丈夫だよりなりー。りなりーのことは誰にも言わないから」
璃奈 「違う…そうじゃない…。私は愛さんにいなくなってほしくない…!」
愛 「…ごめんね。でも、これはアタシなりの恩返しなんだ」
璃奈 「恩返し…?」
愛 「…大嫌いだった麻雀。その楽しさに気付かせてくれた、同好会のみんなへの恩返し。今アタシに出来ることは、これしかないから」
愛は、自分の袖を掴んでいた璃奈を振りほどき、栞子の前へと、大きく一歩を、踏み出した。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
つづく
248: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:42:24.09 ID:zIfTu9pN
【キャラクター紹介.7】
近江彼方
『対面に役満の夢を見せる』能力。
役満の夢を見せられた者は、それがどんな手牌であっても、その役満を目指せると錯覚する、あるいは牌そのものが違う牌に見える。
よって捨牌判断が狂い、通常であれば切らない牌でも切ってしまい、手が崩れる上に放銃率も上がる。
発動条件は、彼方と目を合わせること。能力詳細の通り、対面にしか使えない。
対抗策としては、カンするなり場に捨てるなりして、見せられた役満に必要な牌を全て晒し、その役満の可能性をゼロにする。そうすると、夢から覚めることが出来る。
自分を強くする訳でもなく、他人を陥れるだけのこの能力が、彼方はコンプレックスだった。
尚、能力を使うとどんどん眠くなる。
使いすぎると卓の上で三時間くらい寝る。一度寝ると本当に動かないので、その日は三麻しか出来なくなる。
近江彼方
『対面に役満の夢を見せる』能力。
役満の夢を見せられた者は、それがどんな手牌であっても、その役満を目指せると錯覚する、あるいは牌そのものが違う牌に見える。
よって捨牌判断が狂い、通常であれば切らない牌でも切ってしまい、手が崩れる上に放銃率も上がる。
発動条件は、彼方と目を合わせること。能力詳細の通り、対面にしか使えない。
対抗策としては、カンするなり場に捨てるなりして、見せられた役満に必要な牌を全て晒し、その役満の可能性をゼロにする。そうすると、夢から覚めることが出来る。
自分を強くする訳でもなく、他人を陥れるだけのこの能力が、彼方はコンプレックスだった。
尚、能力を使うとどんどん眠くなる。
使いすぎると卓の上で三時間くらい寝る。一度寝ると本当に動かないので、その日は三麻しか出来なくなる。
249: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/02/12(金) 21:44:15.96 ID:zIfTu9pN
次回 最終話『力ある者、適性なき者』
251: 名無しで叶える物語(たこやき) 2021/02/12(金) 21:55:14.25 ID:OK5HHGuA
栞子ちゃんの読みもほとんど能力クラスだ
253: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2021/02/13(土) 20:48:29.77 ID:M0Z94eTB
愛宕姉に打ち消し能力がついた感じか
…強すぎね?
…強すぎね?
引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1612522095/
最終話へ続く

ついにクライマックス!
コメントする