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1: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:20:53 ID:BVVqipFa
クゥれん

地の文

1期8話直後~1期10話前くらいの時系列

2: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:29:35 ID:BVVqipFa
少し俯きながら、しょぼんとした様子で返事をする可可さん。

ちょっと口調がきつかったでしょうか…。やはりまだまだどう振舞うべきか分かりませんね…。

「大丈夫?ペース速かった?」

声をかけながら駆け寄ってくる千砂都さん達。

私がしゃがむと、おずおずと可可さんが体重を預けてきます。

「足に違和感があるそうなので、大事をとって保健室まで連れていきますね。」

3: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:30:10 ID:BVVqipFa
3人に見送られて、保健室に向かいます。

勢いでおぶって連れていくとは言ったものの、若干気まずい雰囲気です。

こういう時、何をお話しするのが正解なのでしょう。

「レンレン、重たくないデスか?」

「え?そんなことはありませんよ」

「そうデシタか…。」

「そこまで痩せているというわけではありませんが、身長を考えると軽すぎるようにも感じます。しっかりご飯は食べていますか?」

4: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:30:57 ID:BVVqipFa
「さ、最近はちゃんと食べていますよ。引っ越してきたばかりの時は面倒でカップ麺などで済ませていマシタが、運動するようになってからはちゃんと食べてマス。こんなに動いていたら、嫌でも食べなくては体がもちマセン…」

「そうですか。可可さんはかなり華奢に見えますから、少し心配してしまいました」

「全く、レンレンまですみれみたいなこと言わないでクダサイ」

表情こそ見えませんが、口ぶりから拗ねている様子が伺えます。ぎこちない空気の中、歩みを進めます。

5: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:31:29 ID:BVVqipFa
保健室に着くと、養護教諭の先生は既に帰られたようでした。

可可さんをベッドにおろし、靴下を脱いでもらって、足の様子を改めて確認します。

そこまで腫れているようではなさそうで少し安心します。

「走っている時にちょっと足をひねってしまったのデス。そこまでひどい怪我ではないと思いマスが…。」

「歩くと痛むような感じですか?」

「そうデスね」

「少し触っても大丈夫ですか?」

「いいデスよ」

6: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:31:53 ID:BVVqipFa
軽く痛むという部位を押してみます。

「ん-、押されても痛くはないかもデス」

「そうですか。念のため症状は覚えておきましょう。」

確認を済ませ、保健室の棚を物色します。

…ありました。氷のうを手に冷凍庫から氷を取り出し、水道から水を注ぎます。

「これを当ててください」

「ありがとうございマス」

7: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:32:17 ID:BVVqipFa
私にできることは精々この程度でしょう。

ベッドに腰かけている可可さんの隣に腰を下ろします。

「あまり大きな怪我ではないかもしれませんが、無理をするのは感心しませんよ」

「面目ないデス…」

そうして、また微妙な沈黙が訪れます。

…あぁもう、私はいつまでこうなのでしょうか。

8: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:33:03 ID:BVVqipFa
「可可は、もっと頑張らなくちゃいけないと思ったのデス」

床を見つめながら話し始める可可さん。

「5人の中で一番体力が無くて、一番運動が苦手なのは可可デス」

「初めは気持ちさえあれば何とかなると思っていマシタ。でも、真剣に取り組めば取り組むほど、今のままではダメだと思うようになったのデス」

9: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:33:36 ID:BVVqipFa
「かのんと2人で始めたばかりの頃は気にする余裕もありませんデシタ」

「すみれと千砂都が入ってきてダンスで表現できる幅が大きく広がったのは、可可でも分かりマス。レンレンが入ったことで、さらにレベルが一つ上がったように感じるのデス」

「可可が一人ぎこちない動きで踊っていたら、全体を見たときに浮いてしまいマス。だから、もっともっと頑張らなくテハ…と。」

落ち込んでいるのか、それとも悔しいのか。可可さんのこういった表情は初めて見たかもしれません。

10: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:34:10 ID:BVVqipFa
「そんな風に考えていたのですね…」

「でも、気ばかり急いてしまって。これではダメダメデスね…」

笑ってみせてはいますが、あからさまに元気がありません。

「可可さんの気持ちも分かります。ですが、そんなに自分を追い込まなくても良いのではないでしょうか」

11: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:34:33 ID:BVVqipFa
「かのんさんと2人で立ったステージも印象に残っていますが、あの時よりも確実に今の可可さんは歌もダンスも上達していると思いますよ」

「以前は歌唱で強弱をつけるときは声量を下げると声自体もかぼそくなってしまっていましたが、今はメリハリをつけるためにコントロールして声量だけを下げられているように感じます。

「要因は色々あると思いますが、腹筋や肺活量が鍛えられたり、姿勢や口の開き方など正しい声の出し方が定着してきたように感じます」

「ダンスもそうですが、以前の映像と見比べれば一目瞭然です。今は指先まで意識がされているのが分かりますし、重心移動もスムーズになってきていると思います。」

「可可さんの努力はちゃんと結果に出ています。逸る気持ちも分かりますが、自分のことをもっと評価してあげても良いと思いますよ?」

12: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:35:09 ID:BVVqipFa
言い終えてから長々と偉そうにしゃべってしまったなと反省します。

可可さんを見ると、ぽかんとした表情でこちらを見ていました。

…やはり出過ぎたことを言ってしまったでしょうか。

「レンレン、良く見てくれていたのデスね…」

しげしげとこちらを見つめる水色の瞳。

13: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:35:43 ID:BVVqipFa
「そ、そんなことはありませんよ?生徒の活動を把握するのも私の務めですから」

なんとはなしに誤魔化します。…少し以前のような口ぶりになってしまいました。

「ありがとうございます。ちょっと焦りすぎてたかもしれないデス」

表情を見ると、先ほどより穏やかな笑顔です。

少しは可可さんの不安を拭えたでしょうか。

14: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:36:14 ID:BVVqipFa
そうであったら良いなと思っていると、カラカラと音を立てて保健室のドアが開けられます。

「うぃっすー」

「可可ちゃんの具合はどう?」

「全く、怪我してるなら早くそう言いなさいよね」

「あの後ずっと『可可、大丈夫かしら…』って心配してたくせに」

「あんたは黙ってなさい」

「ひどい!」

「あはは、それで大丈夫そう?」

「大きな怪我ではなさそうですが、今日の練習は休んだ方が良いかと」

「そうデスね。今日は衣装のアイディアを考えながら見学してマスね」

15: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:36:40 ID:BVVqipFa
その後、可可さんはスケッチブックを片手に見学。4人で練習を続けました。

「レンレン、今日はありがとうございマシタ」

「どういたしまして」

帰り際にそんなやり取りをした後、可可さんのお家と方向の近いらしいかのんさんが可可さんを送っていきました。

16: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:37:08 ID:BVVqipFa
廊下を歩いていると、背後から声がかけられます。

「レンレーン!」

ガバっと、背後から抱き着かれる。相手は勿論。

「ひゃっ。もう、可可さん。急に抱き着かれたらびっくりするじゃないですか。…あと廊下は走ってはいけないと何度も…。」

「えへへ…、すみません。レンレンの背中が見えたノデ、つい…」

「もう…。しょうがないですね…」

17: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:37:44 ID:BVVqipFa
学友とはいえ、友人同士でこういうボディタッチを伴うコミュニケーションは経験が無いもので、まだ少しドキドキしてしまいます。

可可さんは天真爛漫な方ですから、あまり抵抗が無いのでしょうけれど。

可可さんの方に向きなおって見ると、いつもと変わらない人懐っこい笑顔を浮かべています。

「レンレン、良い匂いがしマシタ…」

「に、匂いなんて恥ずかしいですから嗅がないでください!」

「えー、勿体ないデス…」

「そういう問題ではありません…」

18: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:38:20 ID:BVVqipFa
可可さんは相変わらず、私に対しても積極的に関わってくれています。

最初はどうしてだろうという戸惑いが強かったですが、いつしか理由を考えるのは止めました。

きっと可可さんの人柄なのでしょう。厚意を無下にはできません。

手を振りながら去っていく可可さんに手を振り返しながら、やはりどこかで引け目を感じていることを自覚していました。

19: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:39:04 ID:BVVqipFa
ある雨の日。

朝から空は雲に覆われ、やや湿った空気が肌から伝わります。

天気予報は昼過ぎから雨が降ると告げていました。

休日、部活は午前中まで。

「誰か午後、一緒にお買い物に行きまセンカ?」

練習を終えて、先ほどまで息も絶え絶えといった様相だった可可さんが声をかけます。

20: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:39:36 ID:BVVqipFa
「ごめんね。お店の手伝いすることになってて…」

「夕方に家族と外食に行くのよね…」

「ごめんっ。午後にバイトのシフトが入っちゃってるんだよね…」

可可さんが縋るような目線を私に向けてきます。

「…。申し訳ございません。家の用事がありまして…」

21: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:40:00 ID:BVVqipFa
がくっと肩を落とした可可さん。

可可ちゃーん!と駆け寄るかのんさんと千砂都さん。

やれやれ…といった面持ちで片づけを始めるすみれさん。

本日もスクールアイドル部は賑やかです。

…それをどこか遠く眺めている私を自覚しながら。

22: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:41:15 ID:BVVqipFa
ということで、私はまっすぐに家に帰宅しました。

用事があるというのは決して噓ではありません。…後回しにしても良いことではありますが。

サヤさんが不在の今、家の掃除をするのは私しかいません。

学園祭以降というもの、スクールアイドル部の活動に加えて生徒会長としての仕事も舞い込み、家の掃除など生活スペースだけで手一杯でした。

23: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:41:40 ID:BVVqipFa
しばらく掃除のしていない客間に入って様子の確認から始めます。

窓の木枠に指を滑らせると、手に目では見えなかった埃が付着します。

観葉植物に目を見やると、少し元気がなさそう萎れている印象を受けます。

水やりは定期的に行っているのですが…。植物によってもどれくらい水をあげたらいいかは異なるものですよね。

細やかな管理が出来ていない現状を自覚せざるを得ません。

24: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:42:19 ID:BVVqipFa
「今まで如何にサヤさんに頼ってきたか、思い知らされますね…」

独りごちて軽く溜息が漏れます。

――しっかりしなくてはいけませんね。

そうしてバケツと雑巾、ハンディタイプのモップ、充電式の掃除機を持って家の中をあちらへこちらへと。

25: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:42:45 ID:BVVqipFa
時計を見ると既に午後3時を回っていました。

掃除の途中でチビのご飯が切れかけているのを思い出し、雨が本格的に降り出す前に買いに行ってしまおうと、傘とエコバッグを持ち外に出ます。

買い物を終えてお店を出るとポツポツと雨が降り出しており、早く家に戻ろうと歩き出します。

にわかに雨粒の勢いが激しくなり、家に向かう歩を早めると。

軒先で腕に荷物を持って立ち尽くす人の姿に目に留まります。

26: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:43:06 ID:BVVqipFa
「…可可さん?」

「あぇ…、レンレン?どうしてここに?」

「チビのご飯を買いに来ていたんです。可可さんはお買い物でしたよね?」

「そうデス。ただ、見ての通り傘を忘れてきてシマッテ…」

「それは災難でしたね…。ご自宅はここから近いのですか?」

「…。少しありマスね」

27: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:43:27 ID:BVVqipFa
可可さんのご自宅は存じ上げませんが、返答の含みを鑑みるにすぐ近くではなさそうです。

「良かったら送っていきましょうか?」

「デスが…」

「気にしなくて良いのですよ。この雨では家に着くころには全身びしょ濡れになってしまいます。風邪を引いてしまってもおかしくありません。」

傘をほんの少し可可さんの方に傾けます。

「お願いしマス」

おずおずと傘の下に入ってくる控えめな姿が、普段の印象とは異なるもので思わず口元が緩んでしまいます。

28: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:44:04 ID:BVVqipFa
ほんの少し歩いただけで今後の方針を考え直さざるを得ませんでした。

急に雨脚が強まり、傘一本で2人分の体を降雨から守ることはとても無理でした。

「レンレン、肩がびしょびしょじゃないデスか。…やっぱり可可、走って帰ります。ここまで送ってくれれば十分です」

「しかし、可可さんの家までまだ距離があるんですよね?」

左肩にあたる雨粒を感じながら、他に手はないかと思案を巡らせる。

29: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:44:30 ID:BVVqipFa
「…私の家で雨宿りしていきませんか?」

「予報では夜には晴れるとのことでしたから、少し待てば普通に帰れるはずです。それに家になら他の傘もありますし、雨脚が弱まりさえすれば問題なく帰れると思います」

「でも…、そうデスね。お言葉に甘えさせていただきマス」

進路を変更した私たちは足早に先を急ぎます。

30: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:45:02 ID:BVVqipFa
「ただいま帰りました」

今やこの家で私の帰りを待っていてくれるのはチビだけになってしまいました。

久しぶりに誰かが家にいるというだけで、何となく嬉しく感じます。

…こんな風に思ってはチビに拗ねられてしまうでしょうか。

31: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:45:39 ID:BVVqipFa
「おじゃましマス」

可可さんが靴を揃えているのを眺めながら、声をかけます。

「服が濡れてしまっていますから、着替えないと風邪をひいてしまうかもしれません」

「私のもので申し訳ありませんが、服と下着をお貸しします。来客用のシャワールームがあるのでそちらを利用してください。ドライヤーも脱衣所に置いてあります」

「何から何まで申し訳ありまセン…」

「良いんですよ。それに家に呼んだのは私です」

「シャワーが終わったら以前皆さんをお招きした時に使った客間に来てください。」

32: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:46:10 ID:BVVqipFa
脱衣所まで案内して、自分も別の浴室に向かいます。季節は秋、こう雨に濡れたままでは体が冷えてしまいます。

客人のもてなしのため、可可さんより先に上がらなくてはなりません。普段はもっと時間をかけるのですが、カラスの行水で浴室を後にしました。

少しして、シャワーで体が温まったのかやや顔が赤らんだ可可さんがやってきました。

「ありがとうございマシタ。…いい香りがしマスね」

「今、ダージリンティーを淹れたところです。…。体も温まりますし、折角だから可可さんにも飲んで頂こうかと」

33: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:46:40 ID:BVVqipFa
先日サヤさんが送ってくれたものでしたが、可可さんにわざわざ告げることではないでしょう。

紅茶が好きな私のために、毎年いつも良い茶葉を仕入れてくれていました。

もうこの屋敷で働いてるわけではないのに、本当に親切な方です。私には勿体ないくらい。

「ありがとうございマス!」

可可さんはキラキラとした瞳と咲き誇るような笑顔で喜びを表現してくれています。本当に可愛らしい方だと、スクールアイドル部に入ってからよく感じます。

34: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:47:07 ID:BVVqipFa
「レンレン、その…。可可、ミルクティーが好きなのですが、やっぱりストレートで飲むのが作法だったりするでショウか…」

バツが悪そうにこちらを伺いながら訪ねてきます。

「そんなことはありませんよ。その人が飲みたいように飲むのが一番です」

「それに、ダージリンは産地や収穫時期で味が変わりますが、今入れているオータムナルは味が濃く渋みも強いので、ミルクと相性が良いとされています」

「そうなのデスカ!レンレンは博識ですね…」

「たまたま紅茶が好きなだけですよ。お茶菓子もありますから、どうぞ召し上がってください。次はミルクティーを淹れましょう」

「ありがとうございマス!いただきマス!」

35: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:47:32 ID:BVVqipFa
2人でミルクティーを飲みながら、緩やかな空気が流れます。

「レンレンは紅茶以外にも好きなものはありますか?」

「私ですか?食べ物だと、苺とコンソメスープなどでしょうか」

「そうなのデスカ」

可可さんが頷きながらやや真剣な眼差しをこちらに向けてきます。

「どうかされましたか?」

「そういえばレンレンのプロフィール、まだ作っていませんでしたよね?」

36: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:47:55 ID:BVVqipFa
「プロフィール、ですか?」

「そうデス。スクールアイドルとして外に自分のことを発信していくためにも、プロフィールは用意しておいた方が良いでショウ」

「なるほど、そういうものなのですね」

「それに――」

可可さんを見ると、顔をほころばせて笑いながら続けました。

「可可が、レンレンのことをもっと知りたいデス!」

37: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:48:26 ID:BVVqipFa
そうして2人でお茶を楽しみながら他愛のない話をするだけで、時間はあっという間に過ぎていきました。

お互いの好きなもの。苦手なもの。普段何をしているか。小さいころどんなことがあったか。

そして、スクールアイドル部のこと。

私がいなかった時のこと。私が知らないエピソードをたくさん教えてくれました。

可可さんはもちろん、Liella!の皆さんのことをまだまだ十分に知っているとは言えません。

皆さんのことをもっと知れるのはとても嬉しく、同時に羨ましくも感じました。

38: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:48:51 ID:BVVqipFa
当時の私のことには言及はありませんでした。

きっと、可可さんの優しさです。

わざわざ、掘り起こすようなことではないのかもしれません。わかってはいるのです。

「――わたくしはこのままで良いのでしょうか」

気づけば、そんな言葉が口から出てしまいました。

「?…それは、どういう意味デスか?」

39: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:49:22 ID:BVVqipFa
可可さんはこちらに目を向けます。

水色の透き通った瞳と目線が合って、思わず口を噤みそうになってしまいます。

でも、私は言わなければなりません。

「私は…何かしらの罰を受けるべきではないでしょうか」

「罰…デスか?」

「はい。かのんさんもすみれさんも千砂都さんも、可可さんも。こんな私を仲間として受け入れてくれました」

41: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:49:55 ID:BVVqipFa
怪訝な表情をしているものの、話の続きを待っていてくれています。

「とても嬉しかったです。ですが、私はそれまでの行いの報いを何も受けていません」

「私が皆さんにしてきたことは、軽く水に流してしまっていいことだとは思いません」

「デスが私たちの誰も、もう以前のことは気にしていマセンよ」

「それも分かっているのです。皆さんがとても心優しい方達なのも、私のことを認めてくれているということも」

「こんなことを言っては却って困らせるだけなのだろうと、分かってはいるのです。それでも…」

42: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:50:29 ID:BVVqipFa
次の言葉を紡ごうとしたとき、可可さんが口を開きました。

「分かりマシタ」

「…それでレンレンの気が済むのなら」

再び可可さんと目が合いました。今度は、いつもの彼女の目とは違う印象を受けました。

透き通るような水色は、どこか私ではない遠くを見つめているようでした。

「可可が罰を与えてあげマス」

43: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:51:17 ID:BVVqipFa
「ただし、かのん達に同じことを言っても困ってしまうでしょうから、可可から、一度きり、デスよ。それでいいデスか?」

「構いません。学業とスクールアイドル活動に支障が出ない範囲であれば、どんな罰でも受け入れるつもりです。」

「…分かりマシタ」

可可さんは少しの思案の後、こちらを見て言いました。

44: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:51:35 ID:BVVqipFa
「今度の日曜日は空いていますか?」

「特に予定は入っていません」

「では、可可に1日付いてきてください。レンレンは、どこに行くとしても口答えせずに付いてくること。いいデスか?」

「承知いたしました。どこにでも付いていきます。」

そう返事をすると、可可さんは少し考えてから言いました。

45: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:51:52 ID:BVVqipFa
「…レンレンは、スクールアイドルにとって一番大切なことって何だと思いマスカ?」

「スクールアイドルに一番大切なこと?」

急な質問に、思わずオウム返しをしてしまいました。

スクールアイドルに大切なこと…。そもそも考えたことがなかったかもしれません。

ですが、なぜ今そのようなことを?

私が黙り込んでいると、可可さんが口を開きました。

「デハ、宿題と言うことにしまショウ。時間があるときに考えておいてクダサイ」

46: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:52:17 ID:BVVqipFa
気づけば天気は小雨に落ち着いていました。

「レンレン、今日はありがとうございマシタ!」

「どういたしまして。気を付けて帰ってくださいね」

傘を手渡すと、ニコニコとした笑顔で手を振り帰路に就く可可さん。

手を振って応え、後姿を玄関で見送りました。

47: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:53:56 ID:BVVqipFa
授業と授業の間。

移動教室のため廊下を歩いていると、可可さんの後姿。

ナナミさん達と談笑しているようです。

時間に余裕もあったので声をかけようかと思ったものの、

少し近づいてから会話の邪魔をしてしまうのも、と思い直し踵を返そうとしました。

48: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:54:25 ID:BVVqipFa
「あれ、葉月さんじゃない?」

その一言で、可可さんがこちらを振り向きます。

「レンレン!」

すかさず距離を詰めてくる可可さん。

人目を憚るということは無いようで、一切のためらいはありませんでした。

反射で後退するものの、ぎゅっと全身を抱き留められてしまします。

49: 名無しで叶える物語◆BVVqipFa★ 2024/09/08(日) 17:54:44 ID:BVVqipFa
「もう。可可さんはしょうがありませんね…」

「えへへ…」

そんな笑顔を見せられては、咎めるような言葉をかけられないではないですか。

予鈴が鳴り、気恥ずかしさと名残惜しさがない交ぜの状態で次の授業へと向かいました。

引用元:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11188/1725783653/
you fooder
いい話だなあ。