1: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:14:26 ID:???00
从[🎂ᴗ🎂]从

えいがさき第二章の内容を一部含みます。
no title

2: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:15:25 ID:???00
ガラッ

栞子「こんにちは」

璃奈「あっ、栞子ちゃん。生徒会お疲れ様」

栞子「……あら?璃奈さん一人ですか?」

璃奈「みんなは自主練。私はオートエモーションコンバート璃奈ちゃんボードのメンテナンスがあるから」

栞子「そうですか。……そういえばもう明日でしたね。璃奈さんの誕生日を記念したスペシャルイベント」

璃奈「うん。このイベントのために、ずっと前から色んな企画を考えて、歌もダンスもいっぱい練習してきた」

璃奈「ファンのみんなも楽しみにしてくれてる。私ももう待ちきれない。早く明日が来てほしい」

栞子「ふふっ。そうですね」

栞子「少し早いですが、誕生日おめでとうございます。璃奈さん」

璃奈「ありがとう。栞子ちゃん」


栞子「隣で見ていてもいいですか?」

璃奈「うん。いいよ」

3: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:17:30 ID:???00
璃奈「………………」カチャカチャ


栞子「……前から思っていましたが」

栞子「機械をいじっている時の璃奈さんは、本当に楽しそうです」

璃奈「そう見える?」

栞子「はい。もちろん」

璃奈「えへへ。ありがとう、とっても嬉しい」


栞子「思えば、璃奈さんの才能には何度も助けられてきましたね。スクールアイドルグランプリの時も」

璃奈「……あの時は、むしろみんなに迷惑かけちゃったと思うけど。ハッキングもしたし」

栞子「ハッキングは……いったん置いておくとして」

璃奈「置いておいてくれるんだ」

栞子「結果オーライだったのは事実ですし……今からでも反省文書きますか? ランジュのお母さん宛に」

璃奈「……向こうも今さら送られてもきっと困惑すると思う」

栞子「……話を戻しますが、一度は中止になりかけたグランプリを復活できたのは、璃奈さんの力があってこそです」

4: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:19:35 ID:???00
璃奈「でも、私の力だけじゃ無理だった」

栞子「私一人でも無理でしたよ。せつ菜さんや愛さん、果林さん、ミアさんだけでも同じだったでしょう」

栞子「みんなが自分にできることをしたからこそ、初めてあの結果にたどり着けたんです」

栞子「だから璃奈さんはもっと自分に自信をもっていいんです。自分だけの素晴らしい才能に」

栞子「璃奈さんには、発明でみんなを幸せにする適正があります。私が保証します」

璃奈「……そうかな」

栞子「ええ、そうです」


栞子「と言っても、好奇心に任せて変なものを作るのだけは勘弁してほしいですが」

璃奈「一言多い」

栞子「なんですかお掃除ロボット栞号って」(※ドラマCD参照)

璃奈「今それ言う?」

カチャカチャ

5: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:21:37 ID:???00
璃奈「――よし、調整完了。早速テストしてみる」

スチャッ

璃奈「璃奈ちゃんボード『にっこりん』! どうかな?」

栞子「バッチリです! さすが璃奈さんですね」

璃奈「璃奈ちゃんボード『ぶいっ』!」

璃奈「最近また反応が悪くなってきてたから、イベント前に直せてよかった」

栞子「そうなんですね。やはり長く使い続けてきたから?」

璃奈「それもあるかもだけど……たぶん一番の理由は」

璃奈「私が前よりもずっと、感情を表に出せるようになっているから」

7: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:23:42 ID:???00
栞子「と、いうと?」

璃奈「以前にも璃奈ちゃんボードの調子が悪くなった時があって、調べたの」

璃奈「このボードは、私の表情筋の小さな動きを検知して、感情を映し出す」

璃奈「だから私の表情筋の動きのパターンが変わって来ると」

璃奈「つまり私の表情が少しずつでも動くようになって来ると」

璃奈「璃奈ちゃんボードは誤反応を起こして、うまく感情を表示できなくなる」


璃奈「だから時々こんな風に、“いまの私”に合わせて調整が必要なの」

栞子「なるほど」

8: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:26:04 ID:???00
璃奈「――それでね」

璃奈「この頃少しずつだけど、調整が必要になる頻度が上がってるんだ」

栞子「……それはつまり、璃奈さんが――」

璃奈「うん。私がボードなしでも、だんだん表情を出せるようになっていってる――ということ」

栞子「よかったじゃないですか!」


璃奈「実際、自分でも実感してる。スクールアイドルを始めた頃より、今の方がずっと感情を表に出せてるって」

璃奈「でも私、まだまだ成長したい。そしたら、みんなに私の笑顔をもっと見せられる日が来るかもしれない」

栞子「その時がとても楽しみですね」

璃奈「私も。とっても楽しみ」




栞子「……ですが、もし璃奈さんが素顔で表情を出せるようになったら」

栞子「その時はこの璃奈ちゃんボードは、使われなくなってしまうのでしょうか」

9: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:28:11 ID:???00
璃奈「………………」

栞子「……すみません、変なことを言ってしまいました。忘れてください」

璃奈「ううん。大丈夫」




璃奈「たしかに璃奈ちゃんボードは、私の代わりに私の表情を伝えてもらうために作った」

璃奈「だから私が自分で表情を出せるようになったら、このボードは存在理由を失ってしまうのかもしれない」


璃奈「でももう、璃奈ちゃんボードは――私の一部なの」

10: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:30:24 ID:???00
栞子「一部、ですか」

璃奈「そう。初めてスクールアイドルとしてステージに上がったあの日から、いつだって私のそばにあって」

璃奈「隣でずっと支え続けてきてくれた。私の大切な相棒」

璃奈「そんな璃奈ちゃんボードと離れることなんて、私にはできない」


璃奈「素顔でみんなみたいに笑えるようになりたい気持ちは、今でも変わらない」

璃奈「でも、もしそれが叶う日が来たとしても、私は璃奈ちゃんボードを使い続ける」

璃奈「ボードも、素顔も――どっちも切り離せない、私の表情だから」

11: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:32:27 ID:???00
栞子「……なるほど。それが璃奈さんの想いなのですね」

璃奈「私が勝手に思ってるだけだけどね」

栞子「そんなことないです。そこまで大切に想われているなんて、璃奈ちゃんボードもとても喜んでいますよ」


璃奈「……喜んでる、か」

栞子「?」

璃奈「もしこのボードにAIとか自律思考システムを搭載してたら、ボードが私をどう思ってるのか、聞けたのかな」

璃奈「今のところそういう機能はつけてない。残念」

栞子「……“今のところ”というのが引っかかりますが」

栞子「AIがなくても、大切にされた物には心が宿るって言うじゃないですか。付喪神というやつです」

璃奈「付喪神……そんな何十年も使って来たわけじゃないけど」

栞子「でも璃奈さんは、スクールアイドルを始めてからずっとそのボードを大切にしてきたのでしょう? きっと十分ですよ」

12: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:35:04 ID:???00
栞子「そう考えると、先ほど璃奈さんはボードについて“表情を出せるようになるごとに調整が必要になる”と言っていましたが」

栞子「それも璃奈さんの表情がまた一つ豊かになったことを、ボードが教えてくれているのかもしれませんね」

璃奈「……そうなのかな?」

栞子「そうですよ。ボードも大切な相棒の成長を、心から応援しているのだと思います」

璃奈「……そっか」

璃奈「非科学的だけど……もし本当にそうだったら、私、とっても嬉しい」




璃奈「……栞子ちゃんって」

栞子「?」

璃奈「意外と、ロマンチストだよね」

栞子「そうでしょうか? 自分でそう思ったことはないのですが」

璃奈「しずくちゃんにも負けてないよ」

栞子「ふふっ。誉め言葉として受け取っておきます」

13: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:38:26 ID:???00
栞子「――さて、私もそろそろ練習に行ってきますね」

璃奈「うん。私も機材を片付けたら合流する」

栞子「無理はしてはいけませんよ? イベント前日なのですから」

璃奈「わかってる」

栞子「それならよいです。では後ほど」


――バタンッ

14: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:42:18 ID:???00
そう言って、栞子ちゃんは部室を出て行った。

夕陽が差し込む部室に残されたのは、私と――璃奈ちゃんボードだけ。


工具を片付ける音と、外から聞こえる運動部のかけ声が響く中、
私はふと、璃奈ちゃんボード……大切な相棒の姿を見た。

明日のイベントに向けてしっかりメンテナンスしたから、まるで新品みたいにキラキラ輝いている。
でもこの一年、私はこのボードとずっと一緒に歩いてきた。
その重ねた時間、思い出――想いは、間違いなくこのボードの中に溢れんばかりに詰まっている。

15: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:46:04 ID:???00
始まりは、こんな自分が受け入れてもらえるか不安だった。
今だって、ときどき立ち止まりそうになる時もある。

そんな私の背中をいつも押してくれたのは、同好会のみんな、ファンのみんな……
そして璃奈ちゃんボード――あなただった。




――AIがなくても、大切にされた物には心が宿るって言うじゃないですか。




「ねぇ。璃奈ちゃんボード」

16: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:49:36 ID:???00
「ずっとずっと、私のことを支えてきてくれて、ありがとう」

「私の表情を、感情を、心を、ずっとみんなに伝え続けてくれて、ありがとう」

「誰とも繋がれないと思っていた私を、こんなにたくさんの人たちに出会わせてくれて、ありがとう」


「――ずっと言えていなかったけど」

「スクールアイドルグランプリの時は、ごめんなさい」

「私の心を隠すことに協力させて――あなたもきっと望んでなかったよね」

「あなたが生まれた意味は、決してそんなことのためではなかった」

「だから私は、もう絶対に、あなたをウソをつくための道具になんかしない」

17: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:52:45 ID:???00
「私はあなたを作って……出会えて本当によかった」

「あなたがいなかったら、私はきっといまここにいることはできなかった」

「もしかしたらこの先も、間違えたり、迷いそうになったりすることがあるかもしれないけど……」

「それでも私は何があろうと、あなたとずっと一緒に歩き続けたい。これだけは本当」


「もっともっと、あなたと一緒にいろんな景色を見たい」


「――だから、こんな私でよかったら」

「これからもよろしくね。璃奈ちゃんボード」

18: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:54:04 ID:???00
……もちろん、璃奈ちゃんボードからの返事はない。

なんでだろう。なんだか気恥ずかしくなってきてしまった。
普段、同好会やファンのみんなには、積極的に大好きって伝えられているはずなのに。

もしかしたら顔もトマトみたいに真っ赤になっちゃってるかもしれない。
……そんなことはないか。私に限っては、まだ。


いけないいけない。こんなことをしてる場合じゃなかった。早く片づけを進めないと。
私は急いで工具箱を持ち、自分のロッカーに向かおうとして――

「――あっ!!」

どてっ。

椅子につまづき、派手に転んでしまった。

19: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:56:32 ID:???00
「あいたたた……」

本当に何をしているのか、私は。大切なイベントの前日だと言うのに。
幸いケガというほどのケガはなく、これくらいだったら痣にもならないだろう。
気を取り直して……今度は冷静に、床に散らばった工具を拾おうとした。その時。


――ピコンッ。

どこからか、耳なじみのある電子音が聞こえた。

20: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/12(水) 23:58:36 ID:???00
「…………えっ?」

机の上で光るLED。
さっきオフにしたはずの璃奈ちゃんボードの電源が、いつの間にかついている。


もしかして今の振動で? ……でも、そんな簡単に電源がつくはずはない。
ひょっとしたらどこかで接触不良を起こしたのかもしれない。だとしたら急いでメンテナンスし直さないと。

私はあわてて璃奈ちゃんボードに駆け寄った。
電源周りに異常がないことを確認し、LEDモニターを覗き込んで――




「………………………………」




「……あははっ」

そこに映っていたものが。

なんだかおかしくて、でもそれ以上に嬉しくて、思わず“笑って”しまった。

21: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/13(木) 00:01:00 ID:???00
璃奈ちゃんボードに映っていたもの。

――私の相棒が、私に見せてくれた表情。


それは――




【璃奈ちゃんボード『ハッピーバースデイ』 終】

22: 名無しで叶える物語◆PhNlxVxG★ 2025/11/13(木) 00:06:21 ID:???00

りなりーがこれからもボードと共にあらんことを

23: 名無しで叶える物語◆YMTOB40T★ 2025/11/13(木) 00:09:44 ID:???00
以上です。ありがとうございました。
えいがさき第二章、璃奈のライブパート前にミアが璃奈ちゃんボードについて言ったセリフが本当に素晴らしかったです。

話中では明言しませんでしたが「スクールアイドルグランプリより後の璃奈の誕生日」という設定の関係で、しれっと進級済設定の話でした。
一応言うと「璃奈が表情を出せるようになったら璃奈ちゃんボードはどうなるのか」というくだりの元はスクスタのキズナエピソードです。
時空は違っても根底にある思いは同じはずという思いです。

最後に。天王寺璃奈さん今年も誕生日おめでとうございます。

24: 名無しで叶える物語◆VV6FESpE★ 2025/11/13(木) 00:25:22 ID:???00
乙 りなりー誕生日おめでとう

25: 名無しで叶える物語◆Tm2PtUvJ★ 2025/11/13(木) 01:22:55 ID:???Sd
素晴らしい
おめでとうりなりー!

26: 名無しで叶える物語◆3XTprncT★ 2025/11/13(木) 07:54:46 ID:???00
乙!良い誕生日SSだった

27: 名無しで叶える物語◆6faoR3Q2★ 2025/11/13(木) 09:24:55 ID:???Sd
泣いた
りなりー最高

引用元:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11224/1762956866/
you fooder
いい話だなあ…