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190: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:18:18.94 ID:QKqEF3m3
 ―冬・屋上―


曜「……」

曜(寒いなぁ、流石にこの時期になると)

曜(ちゃんとアップせずに身体を動かすと怪我しそう)

曜(練習場所、変えた方がいいのかな)

曜(でも他に空いてる場所もないし、うーん)

191: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:18:54.94 ID:QKqEF3m3
ルビィ「よーちゃん」


曜「ああ、ルビィちゃん」

ルビィ「ごめんね、待たせちゃって」

曜「いや、急にご飯食べようって言ったのは私だし」

ルビィ「教室でね、少し花丸ちゃんに捕まっちゃったんだ」

曜「あぁ」

ルビィ「どこ行くのって問い詰められて、困っちゃって」

ルビィ「仕方ないから、お姉ちゃんの所って言い訳してきちゃった」

192: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:19:30.14 ID:QKqEF3m3
曜「大変だね、友だちへの言い訳も」

ルビィ「曜ちゃんは平気だった? 千歌ちゃんとか、梨子ちゃんに」

曜「私は全然」

ルビィ「そっかぁ、大人だぁ」

曜「子どもだよ、まだまだ」

曜「みんなに背中を押されるまで、先に進むことさえできなかった子ども」

ルビィ「……そうだね」

193: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:20:02.70 ID:QKqEF3m3
曜「でもさ、よかったね」

ルビィ「なにが?」

曜「最終的に、参加する方向になって」

ルビィ「……」


曜「出たかったんでしょ、ラブライブの決勝」

ルビィ「……うん」

曜「ごめんね、本当は私が千歌ちゃんを説得しなきゃいけなかったのに」

ルビィ「ううん。学校のみんなに頼らないとそれができなかったのは私たち全員の責任」

194: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:20:34.49 ID:QKqEF3m3
ルビィ「ずっと憧れていた舞台。お姉ちゃんとの最後の大会」

ルビィ「千歌ちゃんが泣いていた時も、思ってたの」

ルビィ「例え一人になっても参加したい、そんな風に」

ルビィ「酷い子だよね、ルビィも」


曜「そんなこと、ないよ」

曜「ルビィちゃんにはルビィちゃんの強い気持ちがあった」

曜「千歌ちゃんには千歌ちゃんなりの気持ちが」

曜「人それぞれ、違うのは仕方ないし、人に合わせる必要なんてないと思う」

195: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:21:07.43 ID:QKqEF3m3
ルビィ「それなら、曜ちゃんは」

曜「えっ?」

ルビィ「曜ちゃんはもしルビィに頼まれたら、千歌ちゃんが辞退すると言っても一緒に決勝に出てくれた?」


曜「……分からないな」

曜「私は最後まで、自分の答えをはっきりと出せなかった」

曜「ある程度決めてはいたけど、千歌ちゃんの言葉一つで揺らぐ程度」

曜「心情的には、ルビィちゃんの方につきたいけどね」

ルビィ「うん、それならいいよ」

196: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:21:39.73 ID:QKqEF3m3
曜「私はさ、どうも肝心な場面での決断が遅いみたいなんだよね」

ルビィ「そうだね、曜ちゃんは優柔不断さんだから」

曜「あはは、きっついね」

ルビィ「でも最後には、正しい答えに辿りつく人」

ルビィ「ルビィはそう、信じてるよ」

曜「……ありがとう」


ルビィ「お礼を言われるようなこと、何も言ってないよ」

曜「信じてくれるのが嬉しいんだよ」

197: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:22:11.25 ID:QKqEF3m3
曜「そうだ、こっち向いて」

ルビィ「うゅ?」

曜「よっと」パシャ


ルビィ「あー、写真撮った」

曜「ふふっ、少し大人っぽい、いい顔してたから」

ルビィ「しょーぞーけんの侵害だよ」

曜「難しい言葉知ってるね」

ルビィ「アイドル好きには常識なのだ」

198: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:22:43.83 ID:QKqEF3m3
曜「なるほど、じゃあもう一枚――」

ルビィ「恥ずかしいよぉ――くちゅん」パシャ


曜「おー、いいタイミング」

曜「可愛いくしゃみを記録できたよ」

ルビィ「よーちゃん……」


曜「おっと、怒ってる?」

ルビィ「もう、絶対に人の話聞いてないでしょ!」

曜「ごめんごめん、これは外部には公開しないから」

ルビィ「当然だよぉ、プンプン」

199: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:23:29.02 ID:QKqEF3m3
曜「口に出すと可愛いね」

ルビィ「つーん」


曜「あー、そっぽ向いちゃって」

曜「機嫌直してよ~」

ルビィ「嫌だもん」

曜「困ったなぁ、せっかく恋人との時間なのに」

ルビィ「よーちゃんが悪いんだもん」

曜「うんうん、確かに」

200: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:23:52.59 ID:QKqEF3m3
曜「仕方ない、機嫌を直してもらうために貢物を贈るか」

ルビィ「貢物?」

曜「あっ、こっち向いたね」

ルビィ「なになに、プレゼント?」

曜「そうそう」

ルビィ「なになに!」

曜「はい、これ」

201: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:25:13.94 ID:QKqEF3m3
ルビィ「わぁ、可愛い手袋!」

曜「衣装の合間に作っておいたんだ」

曜「今度北海道の予選に招待されたから、その時にでも使えるかなって」


ルビィ「ありがとう曜ちゃん!」

曜「いいかな、こんな物でも」

ルビィ「嬉しいよ、凄く」

ルビィ「さっきまでの悪事も全部許してあげたくなっちゃうぐらい」

曜「そりゃ助かった」

202: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:25:58.97 ID:QKqEF3m3
ルビィ「もしかして、今日のお誘いは」

曜「うん、これを渡したくて」

曜「もうすぐ冬休みだし、他にいいタイミングが思いつかなかったからさ」

ルビィ「現地に行くときとかでもよかったのに」

曜「それはさ、恥ずかしいじゃん」


ルビィ「なんか曜ちゃんっぽいね」

曜「そうかねぇ」

ルビィ「好きだよ、そゆとこ」

曜「そっか」

203: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:26:30.86 ID:QKqEF3m3
ルビィ「今度お返しするね」

ルビィ「曜ちゃんはマフラーとかの方がいいかな」

曜「あー、それは助かる」

曜「私寒がりだから、できるだけ大きめのだと嬉しいかも」


ルビィ「それだったらながーいの作って、二人で一緒に巻こうか」

曜「それいいね」

ルビィ「でしょ」

204: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:27:02.96 ID:QKqEF3m3
曜「でも外でやったら、関係を怪しまれないかな」

ルビィ「大丈夫だよ。前に花丸ちゃんと似たようなことをやったことがあるから」

ルビィ「きっと仲良しの友達とは普通にやるんだな~ぐらいにしか思われないって」

曜「なるほどね」

曜「言われてみれば、私も千歌ちゃんとやったから平気か」


ルビィ「うーん、二人とも経験済み」

ルビィ「それだと面白くないから、手を組んで歩こうか」

曜「いやいや、それは流石にばれる」

ルビィ「あっ、そっかぁ」

205: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:27:40.07 ID:QKqEF3m3
 キーンコーンカーンコーン


曜「そろそろ時間だね。戻ろっか」

ルビィ「うん」


 ガチャ


曜「あー、中は温かいね」

ルビィ「だねぇ」

曜「ごめんね、寒いとこにつき合わせちゃって」

ルビィ「平気だよ、寒さのおかげで二人きりになれたし」

206: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:31:43.56 ID:QKqEF3m3
曜「あー、でも甘い時間はおしまいかぁ――んっ」


ダイヤ「しかし……は……」

花丸「けど……事実……」


曜「あれ、ダイヤさんと花丸ちゃん」

ルビィ「本当だね」

曜「どうしたんだろ」

ルビィ「行ってみようか」

207: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:32:15.07 ID:QKqEF3m3
ルビィ「お姉ちゃん、花丸ちゃん」

ダイヤ「る、ルビィと、曜さん」

曜「珍しい組み合わせだね」


ダイヤ「え、ええ、花丸さんに誘われまして」

花丸「そうだよ、ルビィちゃんにフラれたから」

ルビィ「ごめんね、マルちゃん」

花丸「気にしないで。約束あったんだよね――曜ちゃんと」

ルビィ「う、うん」

208: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:32:41.12 ID:QKqEF3m3
ルビィ「そういえば善子ちゃんは?」

花丸「梨子ちゃんと二人で音楽室」

ダイヤ「果南さんと鞠莉さんは教室にいましたわね」


曜「あっ、つまり千歌ちゃん一人じゃん」

曜「しまったなぁ、怒られる」

ルビィ「あれ、そうなの」

曜「実は何も言わずにこっそり抜け出してきちゃっててさ……」

209: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:33:10.88 ID:QKqEF3m3
ルビィ「えー、さっきと言ってること違う」

曜「あはは、ちょっと見栄張っちゃった」

花丸「曜ちゃん、嘘は駄目だよ」

曜「うぅ、面目ない」

花丸「ちゃんと千歌ちゃんのご機嫌をとってあげてね」

曜「ヨ―ソロー!」

ルビィ「おー、凄いお返事」

210: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:33:40.47 ID:QKqEF3m3
花丸「さて、それじゃあ教室戻ろうか」

花丸「早くしないと授業遅れちゃうよ」

ルビィ「あっ、本当だ――じゃあね曜ちゃん、お姉ちゃん」

曜「うん、気をつけてね」

ダイヤ「……」


曜「ダイヤさん?」

ダイヤ「えっ」

曜「大丈夫ですか」

ダイヤ「え、ええ」

211: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/05(水) 02:34:13.51 ID:QKqEF3m3
曜「私たちも急がないと――」


ダイヤ「あの、曜さん」

曜「はい?」

ダイヤ「えっと、その……」

曜「なにか、ありましたか」

ダイヤ「……いえ、なんでもありません」

ダイヤ「曜さんも、遅れないように気をつけてください」

曜「はぁ」

2: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:41:16.80 ID:jpvGXIcW
 ―数日後・部室―


ダイヤ「はぁ~~~~~~~~」

千歌「うわぁ、ダイヤさん凄い溜息」

梨子「ルビィちゃんが函館に残ってからずっとあんな感じだね」


果南「というより」

鞠莉「日に日に悪化してまーす」

3: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:41:45.18 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「ルビィ……」

果南「うーん、これは重症だね」

鞠莉「けど、あっちもあっちで」


曜「はぁ、ルビィちゃん……」


梨子「曜ちゃん、すごい落ち込みよう」

千歌「最近仲良いもんね、ルビィちゃんと」

梨子「最愛の人と離れ離れになった恋人みたい」

千歌「でたよ、梨子ちゃんの百合脳」

4: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:42:17.08 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「恋人!?」

果南「うわっ」

鞠莉「ど、どうしたの」

ダイヤ「……いえ、なんでもありません」


千歌「でもダイヤさんの方が重傷だよね」

梨子「まさか――禁断の姉妹愛!」

千歌「……梨子ちゃんも、善子ちゃんが居ない影響が出てるのかな」

5: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:42:44.22 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「はぁ」

曜「はぁ」

梨子「これはたぎるわね~」


千歌「もー」

果南「うーん、まさに地獄絵図」

鞠莉「どうしようもないわね、これは」

千歌「大事な時期なのに練習できないよぉ」

6: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:43:10.74 ID:jpvGXIcW
果南「仕方ない、今日は切り上げよう」

千歌「でも」

果南「こんな状態で練習しても、怪我をするだけだよ」

果南「それより今は明日にでも練習できるようにみんなを正気に戻すこと」

千歌「まあ、確かに」


果南「ダイヤと梨子は私と鞠莉で何とかするから、千歌は曜をお願い」

千歌「……了解」

7: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:43:45.60 ID:jpvGXIcW
果南「さてと」ガシッ

鞠莉「とりあえずダイヤを連れて帰りましょう」ガシッ


ダイヤ「ちょ、何をするのですか」

鞠莉「はいはい、ちゃんと話は聞いてあげるから」

果南「梨子もおいで」

梨子「あっ、はい」

果南「千歌も頼んだよ」

千歌「うん」

8: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:44:18.98 ID:jpvGXIcW
千歌「……」

曜「……」


千歌「……曜ちゃん」

曜「……」

千歌「曜ちゃん、曜ちゃん」

曜「…………」

千歌「……よーちゃん」

曜「ルビ――千歌ちゃん?」

9: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:44:47.72 ID:jpvGXIcW
千歌「あはは、ルビィちゃんだと思った」

曜「うん。声真似?」

千歌「そうだよ、似てた?」

曜「それなりにね」

千歌「うーん、反応薄い」

曜「前にルビィちゃんに逆パターンをやられたからさ」

曜「きっと、慣れちゃってるんだよ」

10: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:45:16.17 ID:jpvGXIcW
千歌「先を越された……、流石我が弟子」

曜「いつから――というかなんの弟子さ」

千歌「うーんと、お笑い?」

曜「ちょっと理解できない」


千歌「それなら、曜ちゃん学の師匠とか」

曜「少し納得できるかも」

千歌「よし、じゃあその路線で!」

曜「ヨ―ソロー! じゃなくて」

11: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:46:11.23 ID:jpvGXIcW
曜「練習はどうしたの? 他のみんなは?」

千歌「ありゃ、本気で気づいてなかったんだ」

曜「なにに?」

千歌「練習は中止になったよ」

曜「えっ、なんで」

千歌「曜ちゃんとダイヤさんの心が函館に飛んでいっているから」

曜「あー……、ごめん」

12: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:46:41.53 ID:jpvGXIcW
千歌「やれやれ、仕方ない幼馴染だよ」

千歌「仲のいい後輩一人いなくなったぐらいで、こんなに動揺するなんて」

曜「だね。面目ないよ」


千歌「まあ仕方ないよ。最近は千歌より優先するぐらいの仲だし」

曜「お昼一人にしたこと、まだ根に持ってる?」

千歌「すこーしだけ」

曜「うわっ、ヤバげじゃん」

千歌「分かっているなら誠意を見せるんだ!」

13: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:47:09.27 ID:jpvGXIcW
曜「それならみかんをどうぞ」

千歌「うむっ、許す!」


曜「チョロいなぁ」

千歌「みかんのパワーは強大だからね」

曜「なるほど」

千歌「お礼に曜ちゃんにもみかんをあげるね」

曜「それじゃあただの交換だよ」

千歌「いいんだよ、こうすればお互いに貰えて幸せ」

曜「ふふっ、確かに」

14: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:47:40.72 ID:jpvGXIcW
千歌「よし、やっと笑った」

曜「あっ」


千歌「笑顔のない曜ちゃん、珍しいから心配だったんだ」

千歌「少しは元気出たかな」

曜「うん、おかげさまで」

曜「ありがとね、わざわざ」

千歌「お礼にもう一個みかんくれてもいいよ」

曜「ごめん、もう持ってないや」

千歌「えー、残念」

15: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:48:07.28 ID:jpvGXIcW
千歌「さてと、じゃあ帰ろうか」

千歌「せっかくのおやすみ、自主練っていう気分じゃないもんね」

曜「そうだね」


千歌「でもまだ時間早いから――そうだ、曜ちゃんの家へ行ってもいい?」

曜「いいけど、なにか用とかあるの?」

千歌「ううん。単純に久しぶりに遊びに行きたいだけ」

曜「ついでにみかんも回収するとか?」

千歌「おぉ、それはありだね」

16: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:48:50.67 ID:jpvGXIcW
 ―渡辺家―


千歌「うーん、久しぶりの曜ちゃんの部屋」

千歌「全然変わってないね。曜ちゃん! って感じ」


曜「最後に来たのいつだっけ」

千歌「夏の予選大会前ぐらい?」

曜「あぁ、あれか」

17: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:49:31.19 ID:jpvGXIcW
千歌「懐かしいよね、曜ちゃん泣いちゃっててさ~」

曜「うぅ、恥ずかしいから止めて」

千歌「でも結構嬉しかったんだよね。あんな風に素直に甘えられること、少なかったから」

曜「そうだっけ」

千歌「そうだよ」


千歌「曜ちゃんはいつも、強い子」

千歌「私の前で弱さを見せない、格好いい子だった」

千歌「だから驚いたよ、あの時は」

曜「……」

18: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:50:01.72 ID:jpvGXIcW
千歌「でもさ、案外普通の子だって最近気づいたんだ」

千歌「私の前ではヒーローでも、他の子に話を聞くと弱さを見せてる」

千歌「梨子ちゃん、鞠莉ちゃん――そして最近のルビィちゃん」

千歌「私が同じ立場になれなかったのは、あんまり信頼されてなかったからかな」


曜「そんなこと、ないよ」

曜「単純に私が見栄っ張りなだけ」

曜「大切な幼馴染の前では格好よくありたい、そんな願望のせい」

19: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:50:58.77 ID:jpvGXIcW
千歌「そっか、そっか」

千歌「好かれてないわけでは、なかったんだ」

曜「そんなわけないじゃん」

千歌「うん、そんなわけない」


千歌「でもね、不安だったの」

千歌「私、時々曜ちゃんのことが分からなくなって」

千歌「仲が良いはずなのに、信頼し合っているはずなのに、どこか噛みあわない」

千歌「そんな風に考えちゃうことが、何度もあったから」


曜(……その気持ちは、分かるかもしれない)

20: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:51:46.59 ID:jpvGXIcW
千歌「部屋さ、少しだけ変わったよね」

曜「そうかな」


千歌「たくさん飾ってある写真」

千歌「昔は私と曜ちゃんの写真だけだったのに、今はルビィちゃんが一番多い」

曜「……だね」

曜(会うたびに写真を撮るせいで、部屋はルビィちゃんでいっぱい)

曜(あれだけ存在感を放っていた千歌ちゃんたちは、すっかり脇役になってしまった)

21: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:52:11.80 ID:jpvGXIcW
千歌「これなら、仕方ないか」

千歌「ルビィちゃんが少しいなくなっただけで、あんなに落ち込むのも」

曜「そうかもね」


千歌「よし、分かった」

千歌「本当は内緒だけど、特別に曜ちゃんには教えてあげるね」

曜「なにを?」

千歌「ルビィちゃんが、なかなか帰ってこれない理由」

22: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:52:38.58 ID:jpvGXIcW
千歌「ルビィちゃん、理亞ちゃんの為に頑張ってるんだ」

千歌「聖良さんに成長した姿を見せるための、お姉ちゃんに贈る曲を作ってて」

千歌「函館で開催させるイベントでそれを披露するんだって」

曜「へぇ、そうなんだ」


千歌「もちろん、ルビィちゃん自身がダイヤさんへの成長を見せる為でもあるみたいで」

千歌「だからさ、見守ってあげてよ」

千歌「きっと必要なことだから、ルビィちゃんにとって」

曜「……うん」

23: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:53:41.77 ID:jpvGXIcW
千歌「寂しさの分は、私が埋めてあげるからさ」

千歌「これでも仲良しの幼馴染なんだから、頼ってよ」

曜「千歌ちゃん……」


千歌「とりあえずコスプレでもする?」

曜「それはルビィちゃんしてくれなかったなぁ」

千歌「意外。普段来てる服とか見ると好きそうなのに」

曜「いやいや、あれはマジで選んでてああなってるから」

千歌「そうなの?」

曜「うん。この前一緒に買い物に行ってさ――

24: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:54:14.00 ID:jpvGXIcW
 ―数時間後・沼津―


千歌「あー、楽しかった」

曜「ありがとね、今日はわざわざ」

千歌「明日からは大丈夫だよね」

曜「うん、おかげさまで」

千歌「じゃあね~」

曜「バイバイ」

25: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:54:39.83 ID:jpvGXIcW
曜「ふぅ」

曜(楽しかったな、久しぶりに千歌ちゃんと二人)

曜(梨子ちゃんを含めて三人も楽しいけど、やっぱり特別な感じが――)


ダイヤ「……」


曜「あれ、ダイヤさん」

ダイヤ「曜さん、こんばんは」

曜「どうしたんですか、こっちにいるなんて珍しいですね」

ダイヤ「……少し、用事がありまして」

26: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:55:12.11 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「千歌さんと二人で遊んでいたのですか」

曜「あっ、それはその……」


ダイヤ「大丈夫ですよ、練習が休みになったのですから気にしなくても」

曜「あ、あはは」

ダイヤ「曜さんもそのおかげで元気になったのでしょう」

ダイヤ「そもそも私自身、こんなところにいるのですから、人を責める資格はありません」

曜「でも、何かの用事なんですよね」

27: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:55:58.39 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「……曜さん」

曜「はい?」

ダイヤ「少しお話があるのですが、時間はありませんか?」


曜「話? 私にですか」

ダイヤ「はい」

曜「時間は大丈夫ですけど、私なにかしちゃいました?」

ダイヤ「……詳しくはちょっと」

ダイヤ「ひとまず場所を変えましょう、ここでは話しにくいので」

28: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:56:36.30 ID:jpvGXIcW
 ―公園―


ダイヤ「ここなら他に人はいませんね」

曜「そうですね、元々人は少ない場所ですし」

曜「他人に聞かれたらマズい話なんですか?」

ダイヤ「ええ」

曜(なんだろう。Aqoursか浦の星に関係することかな)

29: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:57:02.18 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「少し長くなるので座りましょうか」

曜「あっ、はい」

曜(結構、真剣な話?)


曜「その、なにがあったんですか」

ダイヤ「……その、気を悪くしないでくださいね」

ダイヤ「あくまでも噂話で聞いただけなので」

曜「はぁ」

30: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:57:27.40 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「風の噂で聞きました」

ダイヤ「曜さんと、ルビィの、関係について」

曜「!」


 ガタッ


ダイヤ「だ、大丈夫ですか?」

曜「は、はい」

曜(マズい。あからさまに動揺したら――)

31: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:57:49.55 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「その反応をみる限り、事実のようですね」

曜「えっと、いや、なんのことか分からない――」


ダイヤ「大丈夫です、無理に誤魔化さなくても」

ダイヤ「交際しているのでしょう、ルビィと」

曜「…………」

ダイヤ「沈黙は、肯定と受け取っても構わないでしょうか」

曜「……はい」

32: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:58:20.17 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「……薄々、違和感は持っていました」

ダイヤ「二人はあまりにも急激に仲良くなりすぎていた」


ダイヤ「最初はただ、衣装係の関係もあってのことかと考えていました」

ダイヤ「しかし、あまりにも距離が近すぎた――家族か、恋人のように」

ダイヤ「だいぶ前から交際していた」

ダイヤ「そう考えると辻褄が合う部分があまりにも多い」

ダイヤ「どうなのでしょうか、曜さん」

33: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:58:45.70 ID:jpvGXIcW
曜(どうしよう、どうしよう)

曜(しっかりと私を見据えるダイヤさんの目線、もう誤魔化せない)

曜(なんで知られたの)

曜(ちゃんと隠していたはずなのに、誰にも話さずに――)


曜(違う)

曜(一人だけ、知っている子がいる)

曜(ルビィちゃんの希望で話している子が)

34: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:59:11.62 ID:jpvGXIcW
曜(あの冬休みに入る前の屋上帰り)

曜(『何故か』一緒に昼ご飯を食べていたダイヤさんと、花丸ちゃん)


曜(あの時だ)

曜(思い返せば、あの時からダイヤさんの様子はおかしかった)

曜(風の噂じゃなくて、花丸ちゃんから聞いた話)

曜(そう考えるのが、きっと自然なこと)

曜(彼女なら、私とルビィちゃんの仲を快く思っていない彼女なら動機は十分だ)

35: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 04:59:44.17 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「答えられませんか」

曜「その……」

ダイヤ「まあそうですわよね」

ダイヤ「私が同じ立場でもきっと言葉に困るはずです」

曜「……すいません」

ダイヤ「私としては噂が事実であるという確認が取れた、それで十分です」

ダイヤ「曜さんをいじめるつもりはありませんよ」

曜「でも……」

36: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 05:01:02.82 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「大丈夫ですよ、心配しなくても」

曜「へっ」

ダイヤ「実際、黒澤家としては当然同性の交際など反対です」

ダイヤ「しかし、私自身は特に止めるつもりはありません」


曜「ど、どうして」

ダイヤ「今の時代、同性愛などある程度普通のことでしょう」

ダイヤ「大切な妹と後輩の考えを否定するつもりはありませんし、その権限も私には無いですから」

ダイヤ「妊娠等の心配がない時点で男女交際よりも懸案少ないですから、私も助かります」

曜「ダイヤさん……」

37: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 05:01:36.97 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「それに言い方は悪いですが、曜さんにとっては遊びのような関係でしょう?」

曜「えっ」

曜(遊びの、関係?)


曜「そんなことは――」

ダイヤ「いいのですよ、気を使わなくても」

ダイヤ「貴女の目線が千歌さんにむいていることは理解しています」

ダイヤ「今日だってそう」

ダイヤ「ルビィが原因で落ち込んでも、千歌さんと過ごせばすぐに元気慣れる」

曜「そ、それは」

38: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 05:02:10.67 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「ルビィは憧れを持ちやすい子です」

ダイヤ「キラキラと輝いているアイドルが好き、μ'sが好き」

ダイヤ「あの子にとって明るくて人気者の曜さんは、きっとそれらと同じ存在」

ダイヤ「しかも同じ衣装係、距離が近い自分たちだけの世界を持っていた」

ダイヤ「大方あの子から迫って、曜さんは断り切れなかったのでしょう」

曜「いや、迫ったのは私の方からで」


ダイヤ「無理しなくてもいいですよ」

ダイヤ「曜さんのやさしさは、私も知っています」

39: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 05:02:38.10 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「他人に隠しているのも、同性という事情だけではなく、千歌さんに知られたくないという部分も大きいはずです」

曜「っ」


ダイヤ「でもその方が都合はいいのです」

ダイヤ「ルビィがずっと貴女が一緒にいることは、黒澤家の人間であることを考えれば難しいでしょう」

ダイヤ「学生の間は私も庇うことはできますが、それ以降は現実的に難しい」

ダイヤ「あの子には黒澤家の人間として婿を貰い、家を繁栄させていく義務があります」

曜「……」

40: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 05:03:10.20 ID:jpvGXIcW
ダイヤ「千歌さんとの事は、互いの感情もあるでしょうからどうなるかは分かりません」

ダイヤ「ただ適当なタイミングで、あの子とは別れてあげてほしいのです」

曜「ルビィちゃんと、別れる」


ダイヤ「お世辞にも、出来のいい妹ではありません」

ダイヤ「煩わしい、面倒だと、じきに感じるときもくるでしょう」

ダイヤ「別れるときは黒澤家や私の名前を使っても構いません」

ダイヤ「できる限り、あの子を傷つけないようにお願いします」

曜「……はい」

41: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 05:05:43.33 ID:jpvGXIcW
今回は以上です
スレが変わるなどで読みにくくなってしまいましたが、最後までお付き合いいただけると幸いです

45: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:07:58.41 ID:jpvGXIcW
 ―渡辺家―


曜「…………」

曜(まさか、あんなことを言われるなんて)


曜(ダイヤさん、思い込みが激しいからかな)

曜(それとも花丸ちゃんが変な風に吹き込んだ?)

曜(それは、あるかもしれない)

46: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:08:26.86 ID:jpvGXIcW
曜「……ルビィちゃん」

曜(だけど、否定できなかった)

曜(あんな荒唐無稽な話を)


曜(ダイヤさんが口を挟ませてくれなかったから?)

曜(余計なことを言わない方がいいと判断したから?)

曜(どちらもあるかもしれない)

曜(けど、もし心のどこかにそんな気持ちがあるとしたら)

47: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:09:17.40 ID:jpvGXIcW
曜「違う、そんなことはあり得ない」

曜「あり得ない、けど」

曜(傍からみればそう見えているという事実はあるのかもしれない)

曜(もしそうだとすれば、ルビィちゃんは傷ついているのかな)

曜(それとも、私なんてどうでもいいと――)


曜(駄目だよ)

曜(どうしてそうなるの、彼女は私を信じてくれているはずなのに)

曜(なぜ私は、そこで自信を持てないの)

48: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:09:47.66 ID:jpvGXIcW
曜(開き直ってしまえばいいのに)

曜(結果的に交際を続ける許可はもらえたと)

曜(ダイヤさんの勘違いのおかげで、過ごしやすくなったと)


曜(でも弱い私は、それができない)

曜(せっかく千歌ちゃんが助けてくれたのに)

曜(今はますますルビィちゃんに会いたくなってる)

曜(今すぐ彼女の胸に駆け込みたい、話を聞いて慰めてほしい)

49: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:10:26.72 ID:jpvGXIcW
曜(連絡すれば、帰ってきてくれるかな)

曜(泣いて、本音をぶつけて、すがって)

曜(そうすれば、私がルビィちゃんに恋したときのように――)


曜(駄目だ、台無しにするな)

曜(きっと連絡をすれば、私の為に駆けつけてくれる)

曜(けどそれは、彼女が頑張っていることを全て台無しにすることと同義)

曜(絶対にしてはいけない、それだけは)

50: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:11:01.48 ID:jpvGXIcW
曜(私が耐えればいいだけ)

曜(明日から平然とした顔をして過ごすだけ)

曜(ルビィちゃんだってじきに帰ってくる)

曜(それまでいつもの明るい渡辺曜を演じればいい)

曜(なんとか耐えて……)


曜「……嫌だ」

曜「辛いよ、そんなの」

51: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:13:14.22 ID:jpvGXIcW
 ―数日後・函館ライブ後―


千歌「はぁー、函館まで飛んで即席のライブ」

千歌「流石にハードな日程だったね」

曜「だね」

千歌「でもサプライズは大成功だったから、満足かな」

曜「うん」

52: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:14:34.95 ID:jpvGXIcW
曜(やっと終わった、辛い時間)

曜(けどまだ気を抜いてはいけない、悟られちゃ駄目)

曜(私が精神的に落ち込んでいることがばれたら)

曜(ルビィちゃんが傷つくことになる。大切なこの時間にケチをつけることになる)


曜(ルビィちゃんは頑張った。私も千歌ちゃんと過ごした時間を楽しんでいた)

曜(私が傷ついていたと知れば、ルビィちゃんは自分の行動を後悔するかもしれない)

曜(帰ったら前の関係に戻る。それが一番いい)

曜(詳しい話はしなくても、ただ寂しかったからと慰めてもらって)

曜(それぐらいならきっと、許される範囲)

53: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:15:24.56 ID:jpvGXIcW
千歌「でも凄いよね、ルビィちゃん」

千歌「こんな凄いこと、自分の力で成し遂げるなんて」

曜「うん」


千歌「成長なのかな」

千歌「心なしか顔も大人っぽくなってた」

曜「そうかな」

千歌「そうだよ。可愛いだけじゃない、新しい姿」

54: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:16:29.93 ID:jpvGXIcW
曜(一度もルビィちゃんのことを見なかったわけじゃない)

曜(けど私は一度も、彼女と目を合わせなかった)

曜(きっと目が合った瞬間、泣きつきたくなる)

曜(その場の空気、雰囲気を壊してしまって)

曜(だから我慢してた、必死に)


曜(ルビィちゃんも特に私に気を向けることはなくて)

曜(理亞ちゃんやダイヤさんの方ばかりに意識が向いてた)

曜(もちろん、状況的に当たり前なんだけど)

55: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:18:03.43 ID:jpvGXIcW
曜(それでも、理亞ちゃんとは凄く仲良さげになってた)

曜(純粋な顔で笑いあって)

曜(心なしか、私と二人で居るときよりも楽しそうに、輝いてみえて)


曜(千歌ちゃんのいうように成長したから? 隣の芝が青く見えただけ?)

曜(そうではなく、私より大切な人を見つけたのだとしたら?)

曜(私は彼女を自分の元に引き留める権利はない)

曜(やさしいルビィちゃんは私の元に残ろうとしてくれるかもしれない)

曜(けどそうなったら、私はどうすればいいのかな)

曜(ルビィちゃんが、私の元から離れることを望んだら――)

56: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:18:49.65 ID:jpvGXIcW
曜(別れなきゃ、いけないのかな)

曜(ダイヤさんの言葉に甘えて、黒澤家を理由にして)

曜(家のこととか、重くて面倒になったとでもいえばダイヤさんは納得してくれる)

曜(ルビィちゃんは喜んで理亞ちゃんの元へ行ける)

曜(私は――甘えさせてもらっていた立場だから仕方ない)

曜(幼馴染の一番になれなくても、近しい立場として元の渡辺曜に戻ればいい)


曜(ああ、容易に想像できてしまう道筋)

曜(まるでこれが正解だと言わんばかりに、すんなりと進みそう)

曜(…………)

57: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/06(木) 23:20:00.31 ID:jpvGXIcW
千歌「曜ちゃん、どうしたの?」

曜「いや、ちょっと眠くなってきて」

千歌「あー、いつも寝るの早いもんね」

曜「そうそう」

曜「今回は疲れてるし、あと寒さにも弱いし」

千歌「なるほどね」

曜「だからさ、先に部屋に戻って休んでてもいいかな」

千歌「うん分かった。みんなには伝えておくね」

曜「ありがと~」

千歌「……ちゃんと、休んでね」

曜「うん」

27: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:06:00.76 ID:BT+bKGo8
 ―ホテル客室―


曜(一人だ)

曜(函館まできて、ルビィちゃんが近くにいるのに、私はまた一人きり)

曜(……いや、もう忘れなきゃいけないのかもしれないけど)

曜(ネガティブな感情に心が埋め尽くされる)

28: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:06:37.23 ID:BT+bKGo8
曜「うぅ、うぅぅ」

曜(涙が、止まらない)


曜(私はいつからこんな人間だったんだろう)

曜(少し面倒な人間だって自覚はあった)

曜(きっと無理をしていたんだ)

曜(千歌ちゃんの理想の幼馴染でいようとして)

曜(でも無理をしたから溝が生まれてしまった、どこか自分自身もおかしくなってしまった)

29: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:07:42.59 ID:BT+bKGo8
曜「外、綺麗だな」

曜(ホテルからでも、函館の夜景は十分に美しい)

曜(真っ暗闇の中に灯る光)

曜(この中に飛び込むことができたら、どんなに楽しいんだろう)

曜(空を舞うみたいに、飛び上がって)

曜(何にも縛られない場所から世界を眺めて――)


 カチャ


曜(……このホテル、窓開くんだ)

曜(少し顔を出すと、風が気持ちいい)

30: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:08:35.43 ID:BT+bKGo8
 ガチャ――キィ


曜(扉の音? 千歌ちゃん早いな)

曜(もしかして、心配で早めに戻ってきてくれたのかな)

曜(涙拭いて、誤魔化さないと)


曜「千歌ちゃ――」

ルビィ「曜ちゃん!」


曜「……ルビィ、ちゃん?」

曜「どうしてここに?」

ルビィ「ち、千歌ちゃんにお願いして部屋を代わってもらって――じゃなくて!」

31: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:09:20.36 ID:BT+bKGo8
ルビィ「なにしてるの! 駄目だよ!」グッ

曜「へっ?」


 ボスン


曜(引っ張られて――ベッドに?)


曜「ど、どうしたのさ」

ルビィ「とぼけないでよ!」

ルビィ「ま、窓を開けて身を乗り出して」

ルビィ「と、飛び降りようとしてたんでしょ!」

32: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:10:05.28 ID:BT+bKGo8
曜「いや、私はただ夜景を観て――」

ルビィ「誤魔化さないで!」

ルビィ「そう言ってルビィを引き離したあと、また飛び降りようとするんでしょ」ギュッ

曜「だから違う――」


ルビィ「嫌だよ、ルビィを置いていくなんて」

ルビィ「できることがあれば何でもするから、考え直して……」


曜(駄目だ、全然話を聞いてない)

曜(思い込み、姉に似て激しいところがあるから、落ち着くのを待つしかないか)

33: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:11:29.71 ID:BT+bKGo8
―――
――



ルビィ「……ごめんなさい」

曜「あ、あはは」


ルビィ「なんか勝手に騒いじゃって」

曜「いいよ、気にしないで」

ルビィ「でも……」

曜「本気で心配してくれたんでしょ、私のこと」

ルビィ「……うん」

34: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:11:59.76 ID:BT+bKGo8
曜「だけど、どうして私が飛び降りようとしてるなんて思ったの」

ルビィ「だって、曜ちゃんが心配だったから」

曜「心配? どうして?」


ルビィ「曜ちゃん、久しぶりに会ったのに様子がおかしかったでしょ」

曜「……分かるんだ、やっぱり」

ルビィ「分かるよ、それぐらい」

ルビィ「数か月間、ずっと近くで一緒にいたんだもん」

ルビィ「周囲に気をつかって取り繕うとしていることなんて、お見通しだよ」

35: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:12:25.15 ID:BT+bKGo8
曜「そっか。そんなに分かりやすかったか」

ルビィ「そもそも、最近は連絡すら来てなかったんだもん」

ルビィ「今日だって目も合わせようとしない、気づくなっていう方が無茶だよ」

曜「……形無しだなぁ、私の方が年上なのに」


曜「普段からそんなだし、飛び降りてもおかしくないって思われるよね」

ルビィ「うぅ、それは忘れて」

曜「うーん、それは無理だよ。インパクト強すぎたもん」

ルビィ「いじわるさんだ……」

36: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:13:11.53 ID:BT+bKGo8
ルビィ「でもなにがあったの、ルビィがいない間に」

ルビィ「連絡が無くなった時とか、その辺りで」

曜「いや……」

ルビィ「いいよ、どんな内容でも」

ルビィ「ルビィは受け入れられるはずだから」

曜「……」


曜(いいのかな、話しても)

曜(きっと何か言わないと納得はしてくれない)

曜(上手く、隠すべき部分だけ隠せばいいかな)

37: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:13:46.13 ID:BT+bKGo8
曜「……実はね」

ルビィ「うん」

曜「ダイヤさんに、私たちの関係がばれた」

ルビィ「えっ」


曜「本人から、直接言われたんだ」

曜「付き合っているんじゃないかと、はっきりと」

曜「最近、それで悩んでいたみたい」

38: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:14:27.35 ID:BT+bKGo8
ルビィ「ど、どうして」

曜「……分からない」

ルビィ「そんな……」

曜「どこかで気づかれる行動があったのかもしれないね」

曜「私が色々と軽率だったから、ごめん」


曜(間違いなく、出所は一つ)

曜(だけどこの子の前で、花丸ちゃんの名前は出せない)

39: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:15:29.11 ID:BT+bKGo8
ルビィ「ど、どうしよう」

ルビィ「お、お姉ちゃんに知られたら、もう……」

曜(震える声、青ざめた顔)

曜(その意味は家に知られたことによる恐怖?)

曜(それだけ、深刻なことなんだ、やっぱり)


曜「大丈夫、落ち着いて」

曜「今のところ、無理に別れさせられたりはしなさそうだから」

ルビィ「そ、そっか。今日も普通だったもんね」

曜「うん」

40: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:16:04.53 ID:BT+bKGo8
ルビィ「お姉ちゃんは、なんて言ってたの」

曜「ひとまずね、私たちの交際については認めてくれるらしいよ」

ルビィ「えっ!?」


曜「意外?」

ルビィ「う、うん」

ルビィ「正直、信じられないかも」

曜「そう?」

ルビィ「だって、そんなの」

曜「そんなもんなんだよ、きっと」

41: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:16:50.69 ID:BT+bKGo8
ルビィ「……曜ちゃん、まだ何か隠してるよね」

曜「隠してないよ」

ルビィ「嘘、分かるもん」

曜「気のせいだよ」

ルビィ「そんなことないよ、だって――」


 ギュッ


曜「ちょっと、なにを――」

ルビィ「曜ちゃん、凄くドキドキしてる。心が揺れ動いてる」

曜「それは、ルビィちゃんが抱きついてきたからで」

42: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:17:29.57 ID:BT+bKGo8
ルビィ「それなら、なんで泣いてたの」

ルビィ「泣いた痕、顔に残ってるよ」

ルビィ「それだけだったら泣かないよね、曜ちゃん」

曜「……」


ルビィ「そんなに話し辛いことなの?」

ルビィ「ルビィのこと、信じられないの?」

ルビィ「ルビィは曜ちゃんが一番大切だよ。いつも曜ちゃんを信じてるよ」

ルビィ「曜ちゃんは、違うの?」

曜「……そんな、ことは」

43: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:18:01.98 ID:BT+bKGo8
ルビィ「じゃあ話してよ」

ルビィ「心配しないで」

ルビィ「絶対にルビィが助けてあげるから」

ルビィ「曜ちゃんを肯定して、味方でいてあげるから」


曜(…………ああ、やっぱり駄目だ)

曜(この子には敵わない)

曜(固い決意をしても、僅かに触れ合うだけでだけで絆されてしまう)

曜(いいかな、無理しなくても)

44: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:18:39.06 ID:BT+bKGo8
曜「……ダイヤさんにね、言われたんだ」

曜「ルビィちゃんとの関係は遊びだって。私が本当に好きなのは千歌ちゃんだって」

ルビィ「!」


曜「隠していたのは千歌ちゃんにばれない為。一番は千歌ちゃん」

曜「そんな風に決めつけられて」

曜「私はそれに反論ができなかった」

曜「とっさに言葉が出なかった、それが悔しくて」


ルビィ「そ、それなら、気にしなくてもいいよ」

ルビィ「曜ちゃんの気持ち、ルビィはちゃんを理解してるよ」

45: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:19:10.62 ID:BT+bKGo8
曜「ありがとう」

曜「でも、それだけじゃないんだ」


曜(ああ、馬鹿だな私)

曜(これは、ダイヤさんが用意してくれた逃げ道)

曜(それをみすみす、手放そうとするなんて)


曜「適当なタイミングで、別れるように言われた」

曜「ルビィちゃんは気の迷い、私は遊び」

曜「軽い関係なんだから、問題ない」

曜「そんな風に、言われて」

46: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:19:45.82 ID:BT+bKGo8
曜「なんでみんな私を否定しようするんだろう」

曜「誰も私の言葉を信じてくれない、嘘だと決めつける」

曜「ルビィちゃんが好きだと主張しても、好きなのは千歌ちゃん、ルビィちゃんはおまけ扱い」

曜「本当の気持ちを、誰も信じてくれない」

曜(花丸ちゃんも、ダイヤさんも)

曜(きっと他のみんなだって、同じように)


曜「どうして、私は……」

47: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:20:13.24 ID:BT+bKGo8
ルビィ「……ごめんね、ルビィの所為で」

ルビィ「ルビィが自分の都合で函館にいたから――」


曜「違うよ!」

ルビィ「っ」ビクッ


曜「ルビィちゃんは悪くない。悪いのは弱い私」

曜「私は、ルビィちゃんの重荷になりたくないの」

曜「お互いに、支え合える関係になりたいの」

曜「だから、だから――」

48: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:21:29.34 ID:BT+bKGo8
ルビィ「いいよ、その気持ちだけで」

曜「そんなわけには……」


ルビィ「ルビィは十分、曜ちゃんに助けられてる」

ルビィ「曜ちゃんが、好きな人が傍に居ることは、それだけで幸せなの」

ルビィ「好きな人に頼ってもらえる、それ以上に嬉しいことなんてないの」

ルビィ「曜ちゃんは、ルビィがいないと駄目」

ルビィ「ルビィをいつも、必要としてくれる」

ルビィ「ルビィはね、それが嬉しいんだ」

曜「ルビィちゃん……」

49: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:22:10.53 ID:BT+bKGo8
ルビィ「ルビィはずっと曜ちゃんを信じてあげる」

ルビィ「絶対に、一緒にいてあげる」

ルビィ「どんなことがあって、傍で支えてあげるから」

曜「でも、いつか離れ離れになるんだよ」

曜「それならいっそ、今のうちに――」


ルビィ「大丈夫だよ。どんなことがあっても、ルビィは曜ちゃんが望む限り離れない」

ルビィ「だからもう駄目だよ、無理をしたら」

ルビィ「今度から、泣きたくなったらルビィを呼んで」

ルビィ「大急ぎで駆けつけるから。どれだけ大事なことを投げ出してでも」

50: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:22:52.45 ID:BT+bKGo8
曜「それじゃあ、私はルビィちゃんの負担にしかなれない」

曜「やっぱりだめだよ、そんなの」

ルビィ「いいの、ルビィがそうしたいから」

ルビィ「むしろ頼ってくれない方が辛いの」

ルビィ「自分が否定されているみたいで、辛いの」


ルビィ「だから、お願い」

ルビィ「ルビィに依存して、利用して、ルビィだけを見て」

ルビィ「それが一番、黒澤ルビィにとっての幸せだから」

51: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:23:30.92 ID:BT+bKGo8
曜「……ありがとう」

曜「ありがとう、ルビィちゃん」

ルビィ「うん」


曜「……早速、一つだけいいかな」

ルビィ「いいよ」

曜「早いね、まだ聞いてもないのに」

ルビィ「聞くまでもないから」

ルビィ「曜ちゃんがこの状況で、考えること」

曜「……だよね」


ルビィ「好きなだけ甘えていいよ」

ルビィ「まだ時間は、たくさんあるから」

52: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2018/12/07(金) 04:27:57.84 ID:BT+bKGo8
ひとまずここまで

現時点で内容的には折り返しぐらいで、次の投稿分から視点が変わる予定です

引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1543581598/
引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1544038837/
引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1544114699/
第3話へ続く


you fooder
ど、どうなっちゃうの?!